Novosphingobium sp. MBES04株に関し、リグニンモデルダイマーまたは抽出リグニンを添加した際に発現誘導される4つの機能未知遺伝子群の機能解析を行ってきた。ゲノムにマッピングされたRNAシーケンスデータを確認したところ、本遺伝子群は同一のプロモータから転写開始されると推定された。そこでまず、2020年度に構築したβガラクトシダーゼをレポーター遺伝子とするプラスミドに、遺伝子群の上流域すなわち推定プロモーター領域を含む断片をクローニングした。続いて、リグニンモデルダイマーや構造の類似した芳香族モノマーを添加してβガラクトシダーゼ活性を測定することにより、転写制御物質の探索と制御領域の検索を行った。その結果、これらの遺伝子はエーテラーゼシステムの反応生成物であるフェニルプロパノンによって発現誘導されることが分かった。 続いて、上記4つの遺伝子がリグニン代謝にどのように関与するか検証するため、草本を原料とするソーダリグニン、木材粗抽出物を使った培養を行った。これらのリグニン含有画分は多種の芳香族低分子を含むことから微生物の増殖を阻害するが、βエーテル型リグニンモデルダイマーを培地に添加することで、この増殖阻害が緩和された。つまり、MBES04株の持つエーテラーゼシステムによって生じるフェニルプロパノンをエフェクターとして遺伝子の発現誘導が起こることによって、本菌株はリグニン画分中の阻害物質に対する耐性を獲得すると推定された。
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