研究実績の概要 |
本研究では、比の形質を改良するうえで最も効率的な手法を開発する。また、例えば乳脂率と乳量のように、比の形質とその構成形質を同時に改良したいとき、最も効率のよい選抜手法を開発する。 比の形質は、育種価の分布型はもちろん、表現型値の分布の形状も不明確である。当該年度は、まず正規分布する形質における逆数の分布の描写方法を考案した。次に、逆数の分布における平均、分散、歪度および尖度等のパラメーターを推定する方法を確立した。 正規分布する形質Xの確率密度関数をY=1/Xに置き換えたYの密度関数を代数的に表すことはできないが、X→Yの変換ののち、Yをソートすることで逆数の分布を描写することができる。このとき、Xが0に近いと逆数は無限大となることから、それを回避するため、育種改良に一般的に用いられている形質の変動係数(CV)を考慮することとした。一般に、家畜の繁殖形質におけるCVは20%、発育形質では10%程度の値が推定されているため、この値に即して平均と分散を設定することで、分布を描写した。また、分布のパラメーターは乱数の発生により推定した。発生乱数の個数は1,000,000個程度であれば、十分な精度でパラメーターを推定することが可能であった。ただし、CVを設定した場合でも、CV=20%であれば、乱数が±5σの範囲を超えることがあるため、そのような値は異常値として処理した。このような値が発生する回数は1形質あたり1~2回程度と希であるため、分布のパラメーターに与える影響はほとんどないと考えられた。ただし、異常値の範囲を±4σとすると、100個前後の異常値が発生するため注意を要する。
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