研究実績の概要 |
和牛の子取り生産において,分娩監視は労力が非常に大きい業務となっており、精度の良い予測技術の開発が求められている。これまで様々な予測法が開発されてきたが,本研究では、分娩前に見られる腰部の形態変化に着目し,非侵襲的かつ直接的な手法として近年安価で入手可能になった赤外線深度センサ(三次元カメラ)を用いて、分娩前に生じる仙骨靭帯の変化を捉えることによる分娩予測技術を開発することを目的とした。 対象は本学飼養の黒毛和種繁殖牛とし,茨城大学農学部附属国際フィールド農学センター内牛舎の分娩房内の床面から高さ2.5 mに赤外線深度センサ(Kinect v2, Microsoft社)を設置して、1分毎に、三次元点群(三次元情報)を取得した。得られた点群から、高さ情報を利用して、牛の点群を抽出した。抽出された牛のデータのうち後躯部領域の計測が可能な立位のデータを牛点群の高さ情報から抽出した。抽出した牛の形状の特徴量として、曲率(curvature)を計算し、その曲率により表現された後躯部の領域をテンプレートとしたパターンマッチング手法により、抽出および位置合わせをおこない解析に用いた。以上の処理は、主にPoint Cloud Library およびOpenCV library (https://opencv.org)を用いて行った。 後躯部の形状を比較するのに適したデータは、立位かつ深度センサを設置した直下の領域において取得可能であった。曲率を確認したところ、仙骨靭帯の張態による凹みが分娩前に大きくなることが確認できた。また、この差を定量的に評価するために、尾部上部と尾部つけねの領域の平均高さを分娩24時間前から分娩時まで比較したところ、分娩約5時間前に差が大きくなることが確認できた。
|