研究課題/領域番号 |
18K05937
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
杉村 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00728454)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウシ / 卵子 / 成熟 / 卵丘細胞 / 発生能 / cAMP / PKA |
研究実績の概要 |
生育可能卵子を取り囲む卵胞細胞の分子生物学的特徴の解析を目的とした。これまでの研究で卵成熟に先駆けcyclic adenosine monophosphate(cAMP)モジュレーターであるdbcAMPおよびIBMXで卵丘細胞卵子複合体(COCs)を処理することで、ウシ卵子の発生能がすることを明らかにした。このことは、FSHのセカンドメッセンジャーであるcAMPが卵子の発生能獲得に重要であることを示唆している。そこで、この分子機構を明らかにするため、cAMPモジュレーターで処理した卵丘細胞のRNA-seqを行った。その結果、cAMPモジュレーター処理により1861の遺伝子が変化した。cAMPの下流にはプロテインキナーゼA(PKA)およびExchange Protein directly Activated by cAMP(EPAC)が存在するが、cAMPモジュレーターによって変化した遺伝子のうち、PKAの阻害剤であるH89処理により発現が変化した遺伝子は114、一方、EPACの阻害剤であるESI-09処理により発現が変化した遺伝子は26であった。また、cAMPモジュレーターにH89を添加することで、卵子の発生能が有意に低下した。一方、ESI-09処理では発生能の低下は認められなかった。以上、卵成熟に先駆けた卵胞細胞におけるcAMP-PKA系の活性化がウシ卵子の発生能獲得に重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生育可能卵子を取り囲む卵胞細胞、特に卵丘細胞の分子生物学的特徴の一端が明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
卵胞細胞におけるcAMP-PKA系の活性化が卵子の発生能獲得に重要であることが明らかになった。今後は、より詳細な機序を解析すると共に、その知見を基盤にした卵子の発生能向上を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に研究をより発展させるため、最少限の予算に抑えため。
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