研究課題/領域番号 |
18K05939
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鏡味 裕 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (80308303)
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研究分担者 |
平松 浩二 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (80238386)
小野 珠乙 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (10177264)
米倉 真一 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (40443113)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 多能性 / 発生工学 / キメラ / ニワトリ |
研究実績の概要 |
近年の発生工学の進展は、家畜育種繁殖効率の改善や感染症に対する抵抗性の付与による生産効率の向上が期待される。特に、多能性を保持する幹細胞や始原生殖細胞を用いた生殖工学の進展は動物生産性を飛躍的に改善し得るものと期待される。しかし、ニワトリ等の家禽における発生工学は、ヒトやマウス等の哺乳類と比較して困難な点が多い。家禽発生工学の遅延の主因としては、胚発生が卵殻内で進展し、胚発生過程における実験操作が困難であることや、家禽生殖細胞の発生制御がほとんど成されていないことに起因する。そこでこれらの課題を解決するため、本年度は家禽生殖細胞キメラの作出におけるドナー幹細胞の厳密な単離を試みた。家禽における多能性幹細胞は、放卵直後の受精卵中で発生する胚盤葉の明域中央部に局在することを明らかにした。この、ドナー幹細胞をレシピエント胚盤葉に移植し、操作胚を全胚培養によって培養した。生殖細胞キメラ効率を改善するため、レシピエント胚の明域中央部の細胞の不活化(紫外線照射)、あるいは、除去(外科手術)を試みた。これらの処置を施すことで、顕著なキメラ作出率の向上が認められた。また、ドナー幹細胞の多能性をアルカリフォスファターゼ染色によって検証した。これらの細胞はアルカリフォスファターゼによって濃染された。このことから、胚盤葉明域中央部の細胞は多能性幹細胞であろうと示唆された。また、これらの幹細胞は、Vasa、 Dead end、等の遺伝子発現が強いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニワトリにおける幹細胞の多能性が、免疫組織化学的に確認された。また、哺乳類の幹細胞多能性制御遺伝子である、Vasa、Dead endがニワトリ幹細胞の多能性保持に関する主要制御遺伝子であることが明らかとなった。更に、レシピエントの処理を併用することによってキメラ作製率の顕著な向上が確認された。以上の結果から、本年度における研究は、おおむね順調に進展しているものと評価された。
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今後の研究の推進方策 |
ニワトリ幹細胞の多能性保持には多数の遺伝子が協調的に働いているものと思われる。このため、本年度は代表的な遺伝子であるVasa、 Dead endの発現を解析し、これらの遺伝子が鳥類においても多能性保持に関する主要遺伝子であることが明らかとなった。またキメラ作出におけるドナー細胞の置換効率の一層の向上にむけ、レシピエント処理方法の更なる改善が重要であろうと思われる。今後の研究推進方策としては、レシピエント幹細胞の不活化のため、照射する光源や波長、照射時間、等の最適化を図る。これらの、ドナー幹細胞の生物学的特性の解析やキメラ作製方法の改善によって、今後の研究の進展が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品をより効率的に利用したため。なお、次年度の細胞培養試薬代の一部として活用予定。
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