研究課題/領域番号 |
18K05940
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
富岡 郁夫 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (30528196)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | FXR / 性ホルモン / 卵巣 / 排卵 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
核内受容体 FXRは胆汁酸をリガンドとし、コレステロール・脂質・糖の代謝制御因子として肝臓や腸における存在・機能が注目されてきた。このFXRが生殖器にも発現しているが、その機能は全くの不明であった。そこで本研究は、生殖器におけるFXRの機能解明を目的とした。 これまでの研究成果として、マウス卵巣においてFXRは卵胞および性周期黄体に局在し、培養卵巣細胞において、自身の標的遺伝子を介してエストラジールとプロゲステロンの合成を制御することを明らかにした。さらに、細胞レベルの実験だけでは生体内の複雑系におけるFXRの真の機能を解明することは難しいため、遺伝子編集技術を用いてFXRノックアウト(FXR-KO)マウスを作出し、FXR-KOマウスの家系樹立と表現型解析をおこなった。FXR-KOマウスは自然交配により産子が獲得できるものの、出産マウス数および産子数ともに野生型と比較して少ないことが分かった。一方、未成熟FXR-KOメスマウスに過排卵処理すると、野生型マウスに比べ採卵数が有意に増えることが示された。さらに、過排卵処理24時間後のFXR-KOマウスの顆粒層細胞において、エストラジオール合成関連酵素が野生型マウスと比べ有意に高いことを見出した。未成熟FXR-KOマウスへの過排卵処理の結果から、FXRは性ホルモン合成に関与する遺伝子群を抑制方向に制御し、排卵数を抑えている可能性が示された。 本年度は、この分子メカニズムの解明を目指し、遺伝子発現解析を実施した。その結果、FXRは性腺刺激ホルモンの受容体を標的として、その抑制制御をしている可能性が明らかとなった。来年度以降に、FXR-KOマウスに再度、FXRの機能を再獲得させることで、生殖器におけるFXRの機能を明確に証明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FXR-KOマウスでは特徴的な生殖関連の表現型を有する事が分かり、本年度は実験計画にあったFXRの分子標的を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
腸肝組織においてFXRは、過剰な胆汁酸をリガンドとして活性化し胆汁酸合成を抑制する「胆汁酸センサー」としての機能を持つ。本研究において、FXR-KOマウスの卵巣では、「性ホルモンセンサー」として、性ホルモン合成を抑制する機能が示唆された。さらに、FXRは性腺刺激ホルモン受容体を標的としている可能性が示された。そこで、今後は以下の実験計画で分子メカニズムを解明する。 1.FXR-KOマウスの卵巣細胞にFXR遺伝子を導入することでFXRの機能を再獲得させ、FXRの機能を明確に決定する。 2.FXRの標的遺伝子が他にないか、性ホルモン合成に関与する上流遺伝子の発現量をRNAマイクロアレイにより解析する。 3.卵巣内FXRのリガンドをレポーター(Luciferase)アッセイにより探索する。リガンドを決定することで、FXRの上流の作用機序を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
FXR-KOマウスは生殖機能に異常があり、家系維持が困難でFXR-KOマウス個体が増やせなかった。そのため、マウス自体を使用する実験が減り、予算が余った。 飼育規模を拡大し、マウス自体は増えているため、来年度にマウスを使用した実験を集中的に実施する。そのための消耗品費と受託費に繰越額をあてる予定である。
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