研究実績の概要 |
昨年度までに、GWASにより同定された脂肪交雑に対する候補領域について、遺伝子の機能により8個の遺伝子、TECR、GCDH、PLIN3、DPP9、SIRT6、ACSL6、SLC27A6を候補遺伝子として抽出した。その中でも、アミノ酸置換であったSLC27A6遺伝子のK81M多型を最有力候補と考え、兵庫県黒毛和種集団904個体を用いてロース脂肪割合との関連解析を行ったところANOVAのp値はp = 0.0049となり、K81M多型はロース脂肪割合の原因変異である可能性が示唆された。 今年度は本多型が脂肪交雑に与える影響について詳細に調査し、本多型が原因変異であるか検討を行うため、複数の県集団を用いて効果の検証を行った。集団としては、兵庫県441頭、岐阜県461頭、宮崎県560頭および全国から様々な県の個体を含む現場後代検定牛450頭を対象に、TaqMan SNP genotyping assayによるK81Mの遺伝子型判定を行い、分散分析およびTukeyのHSD検定によりBMSに対する効果を検定した。分析の結果、兵庫、岐阜、宮崎、全国のAアリル頻度はそれぞれ0.247, 0.534, 0229, 0.498であり、集団間で差がみられた。また分散分析のp値はそれぞれ、0.00056, 0.0225, 0.559, 0.044となった。すなわち岐阜県や全国集団では一定の効果が見られたものの、宮崎県では効果が認められず、本多型の効果は集団により異なることが明らかとなった。また、TukeyのHSD検定の結果、兵庫県におけるAA型個体とTT型個体のBMS最小二乗平均は6.51と5.22となり、1.29と非常に大きい差を示した。以上の結果により、現時点では本多型が脂肪交雑の原因かは不明であるが、少なくとも兵庫県ではマーカーとしての効果は非常に大きいことが明らかとなった。
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