研究課題/領域番号 |
18K05947
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30194632)
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研究分担者 |
杉野 利久 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (90363035)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フィトール / ギ酸 / メチル基 / 血漿ギ酸濃度 |
研究実績の概要 |
本年度はまず、メチル基転移への関与が最近明らかになってきたギ酸の血漿中濃度の測定法について、ヒツジから得た血漿を用いて検討した。血漿ギ酸からペンタフルオロベンジルブロマイド誘導体を調製し、[1-13C]ギ酸あるいはd4-酢酸を内部標準として用い、ガスクロマトグラフィー質量分析計でμmol オーダーの血漿ギ酸濃度を再現性よく測定することに成功した。血漿酢酸濃度も再現性よく定量することが可能であった。また、尿中のギ酸および酢酸濃度の測定も可能となった。 次いで、摂取したフィトールから体内でギ酸が生成するかどうかを明らかにするために、4頭のヒツジを用いて、第一胃内にフィトールを注入した際のヒツジの血漿ギ酸濃度を測定した。飼料給与下で第一胃内にフィトール(飼料1 kgあたり2から12 g)を注入し、血漿ギ酸濃度を開発した分析手法で測定した。その結果、フィトール注入量の増加に伴い血漿ギ酸濃度の高まる個体もいたが、フィトール注入量の影響が明確に認められない個体もみられた。その原因については明らかではないが、個体によってフィトールあるいはギ酸の代謝速度が異なることが考えられた。また、尿中のギ酸濃度を測定したところ、血漿濃度より尿中のギ酸濃度の方が高かったが、血漿濃度との相関は認められなかった。さらに、血漿の酢酸濃度とギ酸濃度の比、あるいは尿中の酢酸濃度とギ酸濃度の比は、フィトール注入によって上昇する個体が認められた。 さらに反芻家畜のギ酸代謝の変動を検討するために、子牛の出生から離乳までの血漿ギ酸濃度の推移を調査した。血漿ギ酸濃度は出生直後では低値であったが、初乳摂取や成長に伴い増加し、哺乳期の4週齢ですでに一定水準に達していた。このことから、反芻胃の発達は必ずしもギ酸濃度には影響しないことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血漿ギ酸濃度の測定が安定せず、手法を確立するのに時間を要したため、当初予定していた安定同位体投与によるメチル基代謝の解析に関する試験を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フィトール投与時のギ酸濃度の変化をさらに検討するとともに、メチル基関連の代謝物濃度やその動態についても検討する予定である。特に、メチオニン関連代謝物および葉酸関連代謝物の血中濃度や動態に及ぼす飼料の影響について検討をすすめる予定にしている。 また、期待していたようなギ酸濃度の変動が得られていないことから、反芻動物の種類や生理条件による血漿ギ酸濃度の変動についてもさらに調査をすすめ、ギ酸濃度の変動要因についても検討する予定である。血中ギ酸濃度の測定法は確立できたので、今後は研究を加速できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ギ酸の定量分析方法の確立に時間を要し、予定していた代謝試験が実施できなかったため、それに要する経費を使用しなかったので次年度使用額が生じた。本年度に実施する予定の代謝解析のための経費に使用する。
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