本研究では,暖地型マメ科牧草の生育初期段階における根粒およびアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の菌根形成状況に関して基礎的知見を得ることを目的とし,共生がいつ頃開始され,また,その共生状態が暖地型マメ科牧草の初期生育に及ぼす影響について検討した。まず2019年度に実施した実験:ファジービーン(Pb)およびサイラトロ(Si)を用い,アーバスキュラー菌根菌(AM菌)接種の有(+AM)無(-AM)2水準,根粒菌接種の有無2水準の処理を設け,生育初期段階における共生状態が宿主植物の初期生育に与える影響について,結果を再検討した。両草種とも+AMでは,-AMよりも播種後35-44日目に生育が抑制される傾向が認められたことを確認し,PbおよびSiの生育初期のこの期間においては通常の生育に利用されるエネルギーが菌根形成のために使われていると推察した。 次に種子成長袋を用いて,根粒菌・AM菌の接種がPbの初期生長に及ぼす影響について検討した。根粒菌の有無の2水準,AM菌の有無の2水準(+AM,-AM)の処理を設け,インキュベーター内で栽培した。根粒は処理8日目に確認され,菌根形成は28日目に確認された。処理21日目および28日目に+AM菌区で地上部生長の抑制傾向が認められた。本研究の条件下では根粒菌・AM菌の接種はPbの生長の過程に一時的に影響を与えたが,乾物重に影響を与えなかった。また,根粒・菌根の形成時期を比較すると,根粒の形成の方が菌根形成よりも早いことが明らかとなった。
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