研究課題
宮崎県都井岬の放牧草地には外来牧草に侵略される草地と、侵略されない草地が存在する。このような違いが生じる理由を知ることは、「外来牧草が侵略的外来種になる条件は何か?」を知って外来牧草を適切に管理する上で重要である。そこで、数年間の禁牧処理等の野外実験を行った結果、禁牧区では種多様性が増加して外来牧草が消失したことが明らかとなり、高い放牧圧が外来牧草の侵略を導くと考えた。しかし、様々な模擬放牧処理を加えたポット栽培による競争実験を実施したが、予想に反し、外来牧草は在来植物との競争に常に負ける結果となった。競争に弱い外来牧草が放牧草地を侵略できるのはなぜか?この謎を解くために2018年度は、2000年から継続している月例調査を継続するとともに、放牧地での家畜による地表攪乱の影響を制御する実験区を都井岬の小松ヶ丘に設置した。プロテクトケージによる禁牧は、被食も馬糞や蹄傷による裸地形成も制限してしまう。そこで、新規に金網が無い枠組みだけのプロテクトケージ(縦横高さそれぞれ50cm)を制作して放牧地に設置すれば、馬は頭をケージ内に入れることが可能なので草は被食されるが、体全体や足はケージ内に入れることが困難なので馬糞や蹄傷による裸地形成は制限される。そこで、このケージと、金網でガードされたプロテクトケージ(被食も裸地形成も制限)をそれぞれ5個設置してケージ内外の植生調査を定時的に行うことで、外来牧草の消失に対して、被食制限と裸地形成の制限のどちらの効果が大きいかを明らかにできると考えられた。また、外来牧草の侵略が進行していない草地(扇山)では、放牧馬の密度が低く、馬による裸地形成頻度が少ない。そこで、固定植生調査枠(縦横それぞれ50cm)を2018年秋に20個設置し、これらを無処理区5個、馬糞裸地区5個、模擬蹄傷裸地区5個、馬糞+模擬蹄傷裸地区5個に区分して植生調査を行った。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書には、都井岬の外来牧草の侵略が進行せず在来植物の種多様性が高い草地と、外来牧草の侵略が進行し在来植物の種多様性が低い草地を野外実験対象とし、都井岬以外の草地は、植生調査対象のみとすると書かれているが、まさに、この計画通りに進行している。2018年度は、2000年から継続している月例調査を継続するとともに、放牧地での家畜による地表攪乱の影響を制御する実験区を都井岬の小松ヶ丘に設置できた。新規に金網が無い枠組みだけのプロテクトケージ(縦横高さそれぞれ50cm)を制作して放牧地に設置すれば、馬は頭をケージ内に入れることが可能なので草は被食されるが、体全体や足はケージ内に入れることが困難なので馬糞や蹄傷による裸地形成は制限される。そこで、このケージと、金網でガードされたプロテクトケージ(被食も裸地形成も制限)をそれぞれ5個設置してケージ内外の植生調査を定時的に行うことで、外来牧草の消失に対して、被食制限と裸地形成の制限のどちらの効果が大きいかを明らかにできる。10個分のプロテクトケージを設置するのは想定以上に大変であったが、資材費、労力ともになんとか実現にこぎつけた。また、外来牧草の侵略が進行していない草地(扇山)では、放固定植生調査枠(縦横それぞれ50cm)を2018年秋に20個設置し、これらを無処理区5個、馬糞裸地区5個、模擬蹄傷裸地区5個、馬糞+模擬蹄傷裸地区5個に区分して植生調査を行うことができた。これらの野外実験区の結果が出るまでには少なくとも2年はかかるので継続的な調査が必要であるが、画期的な野外実験区を2シリーズ設定できたので、おおむね順調に進展していると判断した。また、2019年度に実施予定のポット実験に向けて、大量のシバとカーペットグラスの苗の養成が必要であるが、予定通り都井岬産のこれらの苗の確保と増殖に成功した。極めて順調である。
2019年度は、2000年から継続している月例調査を継続するとともに、放牧地での家畜による地表攪乱の影響を制御する実験区を2018年に新設したので、その結果を調査する。外来牧草が優占する小松ヶ丘では、採食のみを可能にする実験区と採食と馬糞や蹄傷が可能な実験区、そして金網でガードされた禁牧区(被食も裸地形成も制限)をそれぞれ5個設置して植生調査を定時的に行うことで、外来牧草の消失に対して、被食制限と裸地形成の制限のどちらの効果が大きいかを明らかにできると期待される。また、外来牧草の侵略が進行していない草地(扇山)では、放牧馬の密度が低く、馬による裸地形成頻度が少ない。そこで、固定植生調査枠(縦横それぞれ50cm)を2018年秋に20個設置し、これらを無処理区5個、馬糞裸地区5個、模擬蹄傷裸地区5個、馬糞+模擬蹄傷裸地区5個に区分したので、これらについても植生調査を行う。以前に行ったポット栽培による競争実験では放牧地での馬糞や蹄傷による裸地形成を想定しなかったために、外来牧草は在来植物との競争に常に負けたと考えられる。そこで、ポット栽培による置換型競争実験(de Wit, 1960)に馬糞と蹄傷による裸地形成の因子を追加する新たな工夫を考えた。まず、1/5000aポットに黒ボク土を充填して植物を栽培する。単植区には、在来植物(シバ)もしくは外来牧草(カーペットグラス)を低密度(蹄傷を想定)、高密度で植栽し、混植区には、在来植物(シバ)と外来牧草(カーペットグラス)をそれぞれ半分づつ植栽する。これら通常の単植区と混植区に加えて、馬糞散布処理の処理区を新たに追加し、①単植区、②混植区、③単植+馬糞裸地区、④単植+蹄傷裸地区、⑤混植+馬糞裸地区、⑥混植+蹄傷裸地区の処理区構成とする(5反復)。全ての処理区に対して毎月刈り取る模擬放牧処理を行い、草種毎に乾物重を測定する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
GCB Bioenergy
巻: 11 ページ: 691-705
10.1111/gcbb.12588
Weed Biology and Management
巻: 18 ページ: 167-175
10.1111/wbm.12164