申請者は宮崎県都井岬の放牧草地には外来牧草に侵略される草地と、侵略されない草地が存在することを報告した。このような違いが生じる理由を知ることは、「外来牧草が侵略的外来種になる条件は何か?」を知って外来牧草を適切に管理する上で重要である。そこで、様々な模擬放牧処理(刈り取り、蹄圧)を加えたポット栽培による競争実験を実施したが、予想に反し、外来牧草は在来植物との競争に常に負ける結果となった。競争に弱い外来牧草が放牧草地を侵略できるのはなぜか?この謎を解くために、放牧地での家畜による攪乱の影響を被食とそれ以外(蹄傷、糞)に分離する禁牧区と、蹄傷と糞の影響を分離するポット栽培による競争実験を行った。 放牧地での家畜による攪乱の影響を被食とそれ以外(馬糞、蹄傷)に分離する独自の工夫である放牧制限処理を2年間行った結果、禁牧区だけでなく被食のみ区でも外来牧草が有意に減少した。この結果は、放牧家畜による被食以外の撹乱(馬糞、蹄傷)が外来牧草の侵略性を促進することが示す。次に、蹄傷と糞の影響を分離するポット栽培による競争実験を行った結果、馬糞を加えない場合は外来牧草が在来植物(シバ)に対して競争的に優位とならなかったが、馬糞の存在下では、外来植物が競争的に優位となることが明らかとなった。さらに、放牧地における馬糞による撹乱が外来牧草の侵略を促進するのであれば、馬糞の落下地点で外来牧草の優占性が増加することが予想されたので、外来牧草の進入が少ない扇山でUAV空撮と地上の植生調査の結果を対比した結果、春から夏に馬糞の落下量が多かった地点で秋における外来牧草の優占度が大きく増加したことが示された 以上の結果をまとめると、放牧家畜による撹乱の中でも特に馬糞が外来牧草の侵略性を促進することが示された。
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