研究課題/領域番号 |
18K05951
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
天野 朋子 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (60388585)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分娩時刻 / 時計遺伝子 / マウス |
研究実績の概要 |
適期の分娩発来を促す機序の解明は、早産や遅産を防止する手法の開発につながり、家畜とともに、ヒトの分娩時の母子の安全を守る上でも有用である。本研究では、適期の分娩発来に関わる機序の一環として、睡眠など、特定の時刻(時期)に起こる生命現象を制御する時計遺伝子と、分娩発来の時期との関係を明らかにする。 今年度は時計遺伝子と分娩開始時刻との関連を明らかにするため、野生型マウス(WT)同士、及び時計遺伝子を人為的に欠損したマウス(KO)同士の雌雄を交配させ、得られた妊娠雌マウスの分娩開始時刻を調査した。一方、特定の時間(時期)に起こる生命現象は、時計遺伝子の他、環境からの時間を告げる刺激(昼と夜のような環境の時間的変動)の影響も受ける可能性がある。そのために本研究では、分娩が開始する交尾後18日目以降、12時間の点灯と消灯の繰り返し (明暗条件)、及び終日消灯 (恒暗条件)とした動物室にて、それぞれWT同士及びKO同士の交配から得た妊娠雌マウスを飼育し、分娩時刻制御における時計遺伝子の作用と環境の明暗の作用の両方の検出を試みた。 その結果、恒暗条件下のWT同士の交配にて、交尾後19日の午後から20日の夜明けに分娩開始が集中する傾向を認めた。一方、恒暗条件下のKO同士の交配では、分娩開始は特定の時期に集中せず、交尾後19日の午後から21日にかけ分散していた。この結果に基づき、今後は交尾後19日の分娩開始直前に、WT同士、及びKO同士の交配の雌マウスから血清や卵巣を採取し、分娩誘起に関わるホルモン濃度や、その分泌組織である卵巣黄体などにおけるホルモン合成関連の遺伝子発現を比較する。一方、明暗条件下のWT同士の交配では、恒暗条件下のWT同士の交配に比べ、分娩時期が0.5日程度有意に早まっており (P<0.05)、分娩直前の時期の環境の明暗が、分娩時期の決定に関わる新要因として提示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分娩誘起に関わるホルモン制御などの生理機構と時計遺伝子との関連を調べるためには、分娩直前の時計遺伝子を人為的に欠損したマウス(KO)と野生型マウス(WT)から血清などのサンプルを採取し、ホルモン濃度を比較するなどの検討が必要である。そのためには、WTとKOの分娩時刻の詳細を調べ、あらかじめサンプル採取に最適なタイミングを決定する必要がある。また、分娩時の環境の明暗の繰り返しが分娩時刻に与える影響を明らかにしておくことにより、時計遺伝子の分娩時刻への関与について、より詳細な解析が可能となる。今年度はこれらの検討を全て終了することができ、すでに血清サンプルの回収を開始している。以上から、本課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
時計遺伝子と分娩時刻との関連を解析するために、WT同士の交配、及びKO同士の交配の雌マウスから血清や卵巣を採取し、プロジェステロンや、その分解度を示す20α-ジヒドロプロゲステロンといった血中のホルモン濃度や、ホルモン分泌組織である卵巣黄体などにおけるホルモン合成関連の遺伝子発現を比較する予定である。また今年度は分娩直前の明暗の繰り返しが分娩時刻を早めることも明らかにしており、例えば、その明暗の長さの変更や、照明の照度などが分娩時刻に影響する可能性も検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は学会への参加費や旅費としての執行を予定していた。しかし学会発表の要旨登録の期日までに実験のデータがそろわなかったため、参加・発表をとりやめた。そのため次年度使用額が生じた。学会発表は次年度に行うこととし、次年度使用額はそのために使用する。
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