研究実績の概要 |
昨年度までに時計遺伝子(Per1とPer2)が欠損して体内時計を失ったマウス(KOマウス)と野生型マウスの妊娠期間には差がないことを見出し(19.9±0.1日 vs 20.3±0.1日)、時計遺伝子の出産のタイミングへの関与は薄いことを確認した。この実験は照明の影響を除くため、終日の消灯(D/D)の下で行っていたが、野生型マウスの出産は通常の点灯と消灯を12時間ずつ繰り返す条件(L/D)に戻すとやや早まり、妊娠期間は有意に短くなった(19.3±0.1日, P<0.05)。今年度はKOマウスも同様に照明の刺激(L/D)にて出産の時期が早まる可能性を検討し、照明が出産のタイミングの決定に関わる主要因であることをさらに突き止めようとした。しかしL/DにおけるKOマウスの妊娠期間は20.0±0.2日となり、出産の時期が早くなることはなかった。このことはKOマウスの出産直前の胎児の体重が野生型のものより有意に軽い(妊娠17.5日目の胎児一匹の体重0.7g vs 0.6g, P<0.05)ために起こる可能性もあった(胎児の重量が重いほど出産が早まる傾向が知られている。)。しかし、それ以外にも出産を促進するホルモン類の分泌などへの時計遺伝子の関与も考えられ、時計遺伝子の関与は複雑である可能性が示された。 これまでの検討から照明と出産の時期との関係は明確であったため、今年度は照明がメラトニンを介して出産時刻を制御する可能性も検討する予定であった。しかしコロナ禍により、本検討に用いるメラトニン変異マウスの入手が遅れ、検討に至らなかった。本検討は今後行っていく。 また今年度はこれまでの研究成果を取りまとめ、Theriogenology誌に投稿し、受理された。
|