研究課題/領域番号 |
18K05952
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小笠原 英毅 北里大学, 獣医学部, 講師 (30535472)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腿二頭筋近位部 / 日本短角種 / 放牧 / 脂肪滴含有筋線維 / CD36 / 筋線維型 |
研究実績の概要 |
本研究は放牧飼養と筋線維内の目に見えない脂肪(筋線維内脂肪滴)蓄積機構に焦点を当て、出生から出荷に至るまで、骨格筋の脂肪滴含有筋線維の構成割合、その生理学的意義を骨格筋で解析し、骨格筋形成機構の詳細を明らかにすることを目的としている。哺乳期の日本短角種去勢雄とダブルマッスル形質を有する日本短角種を試験牛とし(現在、サンプリング過程)、本年度は日本短角種去勢雄(約18ヶ月齢)を用いて、5月末から10月末まで放牧区と舎飼区に分け、給与飼料は、放牧区は放牧草、舎飼区は毎朝、放牧草を刈り取り、飽食給与とした。放牧開始前、放牧中期に肝臓と大腿二頭筋近位部、中遠位部を採取し、肝臓では脂質代謝関連因子の mRNA発現を、大腿二頭筋では筋線維型および脂肪滴含有筋線維、CD36陽性筋線維の構成割合を解析した。 肝臓では脂肪酸蓄積に関わるFASNが舎飼区で、DGAT2が放牧区で時期依存的に増加することが明らかとなった。特に舎飼区でのFASNの増加は著しく、舎飼区の皮下脂肪厚増のキーファクターと考えられた。一方、放牧飼養でも脂質蓄積が促されるDGAT2の増加したが、体脂肪蓄積は認められず、放牧飼養で増加する筋線維内脂肪滴蓄積に関わる可能性が示唆された。大腿二頭筋近位部の筋線維型構成割合を算出したところ、飼養管理に関わらずⅠ、ⅠD型が多く、脂肪滴蓄積筋線維の割合は中遠位部よりも高く、放牧飼養により増加した。脂肪酸取り込みに関わるCD36発現は全体の約40%(中遠位部は20%)で、ほぼ全てがⅠおよびⅠD型筋線維に発現した。 以上より、飼料同一条件下での日本短角種の肝臓では飼養管理により脂質合成が異なること、大腿二頭筋近位部では遅筋型筋線維が多く、姿勢保持などの基本行動に関与することから、脂肪滴含有筋線維も多く存在すること、また、中遠位部と同様に脂肪滴の蓄積にはCD36を介することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の具体的目的である哺乳期の試験牛の設定は終了し(育成初期に移行)、現在サンプリング中である。毎月の体尺、採血も滞りなく、血液成分の分析も終了している。肥育前期の肝臓の脂質代謝様式、大腿二頭筋近位部、中遠位部の筋線維型構成、脂肪滴含有筋線維およびCD36発現筋線維の構成割合の算出も終了している。現在、育成初期および肥育中期の日本短角種の放牧および未放牧の飼養試験を開始しており、サンプリングも順調である。大腿二頭筋近位部の筋形成因子(myostatin、MyoD、myogenin)の発現解析を行っていないため(現在、進行中)、②の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在行っている育成初期および肥育初期の日本短角種の肝臓および大腿二頭筋近位部、中遠位部を放牧開始前(サンプリング済み)、放牧中期で採材し、各種解析を行う。ダブルマッスル形質を有する日本短角種に関しては現在、哺乳期で哺乳終了後の6ヶ月齢時に前述の採材を行い、筋線維型構成、脂肪滴含有筋線維の割合を算出する。また、分娩事故で死亡した日本短角種雄(現在3頭サンプリング済み)を用いて、前述と同様の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
各組織学的解析および遺伝子発現解析に必要な試薬を実際に使用する時期に合わせて購入したいため。
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