研究課題/領域番号 |
18K05953
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
恒川 直樹 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50431838)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精原幹細胞 / ニッチシステム / 季節繁殖動物 |
研究実績の概要 |
(1)比較形態学的研究:季節繁殖性を示すスナネズミを用い、周年繁殖動物の実験動物用マウスとの比較を行った。スナネズミの精子発生に関する情報は少ないため、使用した系統の精子発生サイクル表を構築し、PAS反応およびレクチンPNA染色がステージ判定に有効である事が判明した。スナネズミを材料にして精巣組織から精細管およびセルトリバルブ領域を単離し、常法に従い固定後、ホールマウント標本において、GDNF、GFRα1の二重染色を施し、両因子の分布パターンを調べた。その結果、GDNFの陽性領域において、GFRα1の陽性細胞の精原幹細胞が確認できたことから、両者の関係はマウスやハムスターと同様、精原幹細胞ニッチシステムのマーカーとして有効である事が示唆された。現在、より高感度で検出できる方法を検討しているところである。また、様々な動物種を用いた比較解析を行うため、譲渡によって野生個体のアカネズミの精巣組織を入手し、解析を急いでいる。一部の動物種においては免疫反応性を示さなかったが、げっ歯類を中心に交差反応が認められた。 (2)組織培養による精原幹細胞の観察:マウスで確立された気相液相境界面培養法(Sato et al., Nature2011)を参考にして、スナネズミの精巣組織を用いた培養を行った。マウス以外の成功例は、今のところ報告がないが、培養組織片をHE染色により組織学的に解析を行ったところ、培養初期において活発な精原幹細胞の増殖が認められた事は、昨年度の概要で報告したが、精原細胞に続く精母細胞への分化が多数認められた。現在培養条件の見直しを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織培養による精原幹細胞の観察について、気相液相境界面培養法(Sato et al., Nature2011)を参考にした解析が、当初の計画に対してやや遅延している。6ヵ月にわたる長期培養には成功しているが、精細胞の増殖は一過性に認められているものの、解析に供する充分な材料が得られていないことから「やや遅れている」とした。その理由として、培養に用いる動物の生後日齢が成功の可否を握っていることが判明している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)比較形態学的研究:多様な動物での比較を行う必要があり、既にイヌ、ウマ、ブタ、ヤギ、コウモリ、アカネズミの精巣を入手している。これらに対しても広く免疫染色を施し、総合的に精原幹細胞ニッチシステムの普遍性について検討を重ねる。 (2)組織培養による精原幹細胞の観察:培養に適している時期をスナネズミを材料にして特定するため、新生仔個体から成体に至るまでの一連の個体を既に入手した。その組織学的な解析の結果、培養開始に適した時期が明らかになったことから、現在培養を継続している。
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次年度使用額が生じた理由 |
組織培養による精原幹細胞の培養に、時間を要している。マウスで確立された気相液相境界面培養法(Sato et al., Nature2011)を参考にして、スナネズミの精巣組織を用いた培養を行った。その結果、生後日齢の精原幹細胞の性質は、マウスとスナネズミの間で大きく異なり、マウスは生後直ちに活発な分裂が行われるのに対して、スナネズミの場合は一時的に分裂が抑制されることが、組織学的な解析により判明している。すなわち、培養条件下においても一時的な分裂抑制が加わる事から、培養に要する日数が大幅に増えることが新たに判明した。このため、直接経費として319,028円を令和3年度の計画として残し、培養用のプラスチック(100千円)、培養試薬(200千円)を予定する。
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