研究課題
(1)比較形態学的研究:季節繁殖性を示すスナネズミを用い、周年繁殖動物の実験動物用マウスとの比較を行った。スナネズミの精子発生に関する情報は少ないため、使用した系統の精子発生サイクル表を構築し、PAS反応およびレクチンPNA染色がステージ判定に有効である事が判明した。スナネズミを材料にして精巣組織から精細管およびセルトリバルブ領域を単離し、常法に従い固定後、ホールマウント標本において、GDNF、GFRα1の二重染色を施し、両因子の分布パターンを調べた。その結果、GDNFの陽性領域において、GFRα1の陽性細胞の精原幹細胞が確認できたことから、両者の関係はマウスと同様、精原幹細胞ニッチシステムのマーカーとして有効である事が示唆されたが、種間差による免疫染色性の問題が生じた。(2)精巣組織培養の試み:マウスで確立された気相液相境界面培養法(Sato et al., Nature2011)を参考にして、スナネズミの新生仔個体の精巣組織を用いた培養を行った。また、比較検討が必要であると判断し、去勢によって摘出された未成熟個体のブタおよびネコの精巣組織を用いて、培養を行った。マウス以外の成功例は、今のところ報告がない。そのような背景の中で、スナネズミとネコでは、その培養組織片をHE染色により組織学的に解析を行ったところ、培養初期において活発な精原幹細胞の増殖が認められ、多数の精母細胞への分化増殖が確認された。その一部は減数分裂を経て、ごく僅かではあるが円形精子細胞が認められ、伸長型精子細胞には至らなかった。免疫組織化学的染色およびRT-PCRによる解析の結果、HE染色を指示する結果が得られた。同様にして、ブタを材料に行ったところ、同法では100日間を超える長期培養にもかかわらず、精母細胞への分化がごく僅かであり、培養条件の見直しが必要であると判断された。
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Dev Growth Differ
巻: 63 ページ: 277-284
10.1111/dgd.12738
Sci Rep
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