研究課題/領域番号 |
18K05954
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
柴田 昌宏 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (60370631)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肉用牛 / 肥育・枝肉成績 / 肉質 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
今年度は、肉用牛の枝肉形質、肉質等の制御因子の同定を行うため、肉用牛肥育試験から得られたデータ及び試料の分析、解析を進めた。肥育試験は2試験区に分け、肥育前期に半年間の放牧後、中期以降は舎飼いで飼料イネWCSを多給した放牧区に対して、肥育全期間、穀物多給の慣行肥育を行った対照区を設定し、肥育・枝肉成績、肉質及び筋肉内遺伝子発現について黒毛和種去勢牛で検討を行った。 肥育成績は、放牧時の日増体量(DG)は放牧中に減少が認められたが、放牧直後では対照区と比較して増加が認められ、出荷時体重は両試験区で有意差は認められなかった。枝肉成績は、放牧区で枝肉重量の減少ならびに牛肉色基準及び牛脂肪色基準の増加が認められた。枝肉の皮下脂肪厚は対照区よりも薄く、また、放牧区で筋肉内の粗脂肪含量が減少ならびに粗タンパク質含量が増加したことから、脂肪蓄積が抑えられ、赤身肉の歩留まりが高い枝肉として仕上がったことが示唆された。肉質は、放牧区でβカロテン及びαトコフェロールの増加が認められ、多価不飽和脂肪酸及びn-6/n-3は減少が認められた。以上より、放牧あるいは飼料イネWCSの多給で枝肉形質ならびに肉質への影響が認められたことから、これらの原因を解析するため、筋肉内遺伝子発現の解析を行った。遺伝子の発現解析では、肥育牛の生産性の指標と考えられるMyostatin遺伝子ならびに骨格筋分解の指標となるAtrogin-1遺伝子について肥育過程での発現変動を明らかにした。試験区間において、放牧中期に骨格成長が増加傾向にあり、後期には低下し、さらに骨格筋の分解は、放牧後の飼料イネWCS多給時に抑制されていることが遺伝子の発現変動から明らかとなった。肥育過程におけるこれらの遺伝子発現変動から、放牧後の飼料イネWCS多給時に骨格筋の成長が亢進状態にあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで2回の肥育試験から得られた、肥育・枝肉成績及び筋肉試料を対象に、枝肉形質、肉質等の制御因子探索のため、肥育・枝肉成績データ及び筋肉試料の分析、解析を実施した。その結果、肉用肥育牛へ放牧や牧乾草を給与することにより、一時的に生産性は低下するものの、肥育期間全体では代償性成長等を活用することで、生産性が維持できることが遺伝子の発現変動からも明らかとなった。これらの一部の結果については、取りまとめを行い、学術論文へ投稿し、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、放牧あるいは飼料イネWCS等の粗飼料を取り入れた肉用牛肥育試験から得られたデータ及び試料の分析、解析を進める。これは、肉用肥育牛の発育過程において骨格筋成長あるいは肉質に関与する遺伝子の発現解析を実施し、これらと枝肉形質、肉質との関連について検討を行う。令和3年度以降は、前年度までの分析、解析を継続するとともに、枝肉成績あるいは肉質が異なる肥育牛において、発現遺伝子の解析を実施し、この差異から枝肉あるいは肉質へ影響を及ぼす遺伝子の探索を行う。さらに、肉質等へ影響を及ぼす候補となった遺伝子について、肥育ステージでの遺伝子の発現解析を実施し飼養環境との影響を評価する。得られた結果は適宜、学術論文等としてまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は当初の予定通りに進捗したが、若干の残額が発生した。残額は、次年度に繰り越し、次年度予算と合わせて執行を予定している。
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