研究課題/領域番号 |
18K05956
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
勝俣 昌也 麻布大学, 獣医学部, 教授 (60355683)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 時間栄養学 / ブタ / 時計遺伝子 |
研究実績の概要 |
4週齢の去勢雄豚を不断給餌条件下で3週間飼育した。飼育室は7時に照明を点灯し、19時に消灯した。この条件で3週間飼育し、小腸、肝臓、筋肉における時計遺伝子と塩基性アミノ酸トランスポーターのmRNA発現量の日内変動を明らかにするために、3時、9時、15時、21時にサンプルを採取した。採取したサンプルのBmal1、Clock、PER1、PER2、CRY2、塩基性アミノ酸トランスポーターのmRNA発現量を測定した。 空腸の時計遺伝子Bmal1は午後に発現量が高く、PER1とPER2は9時の発現量がもっとも高かった。一方、回腸ではこれらの時計遺伝子の発現量は日内変動を示さなかった。空腸では膜消化酵素活性が日内変動を示したのに対し、回腸では日内変動を示さないことを、2018年度に明らかにした。空腸と回腸の膜消化酵素活性の日内変動のちがいは、空腸では時計遺伝子発現量が日内変動するのに対し、回腸では日内変動しないことと関係があるのかもしれない。肝臓では、PER1の発現量が9時にもっとも高く、PERは15時の発現量がもっとも高かった。またCRY2の発現量が9時にもっとも高かった。筋肉(菱形筋)では、PER1、PER2およびCRY2の9時の発現量がもっとも高かった。 空腸の塩基性アミノ酸トランスポーター(Cat1、Cat2、Cat3)の発現量の平均値は3時がもっとも低く、9時と15時の平均値が高かった。回腸ではCat1、Cat2、Cat3の発現量の平均値は15時がもっとも高かった。 このように、時計遺伝子の発現量の日内変動は組織によってちがうことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に摂食行動と小腸の膜消化酵素活性の日内変動を明らかにでき、2019年度は末梢の各組織における時計遺伝子の発現量を明らかにできた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ブタの摂食行動、小腸の膜消化酵素活性、小腸、肝臓、筋肉の時計遺伝子発現量に日内変動があることを明らかにした。これまでの飼養条件(7時点灯・19時消灯、不断給餌)では、これらの日内変動が光環境の影響を直接受けているのか、あるいは、摂食行動の影響の方が強いのか、明らかにできない。今後は、これらの日内変動が、光環境の影響を直接受けたものか、あるいは、摂食行動の影響を受けたのかを明らかにするための実験を行う。 具体的には、暗期(19時~7時)のみの不断給餌の条件でブタを飼育し、小腸の膜消化酵素活性、小腸、肝臓、筋肉の時計遺伝子発現量の日内変動が24時間不断給餌と比較して変化するかどうか、明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年9月にブラジルで開催されたInternational Symposium on Energy and Protein Metabolism and Nutritionで2018年度の成果を発表した。このシンポジウムへの渡航費が予想していたよりも少額で済んだため次年度使用額が生じた。2020年度は、小腸の膜消化酵素活性や時計遺伝子発現の日内変動が、光環境の影響を直接受けたものか、あるいは、摂食行動の影響を受けたのかを明らかにするための動物実験を行うとともに、遺伝子発現などの分析のために経費を使用する。
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