2020年度までに空腸の時計遺伝子(Bmal1、Per1、Per2、Cry2)のmRNA発現量に日内変動があることを観察した。さらに空腸のグルコーストランスポーター(SGLT1とGLUT2)のmRNA発現量にも日内変動があることも観察した。観察できたのはmRNAの日内変動であり、タンパク質レベルでも発現量が日内変動するかどうかは不明であった。そこで、2021年度は時計遺伝子のうちBmal1、グルコーストランスポーターのうちSGLT1を選択し、それぞれのタンパク質が空腸で日内変動するか検討した。Bmal1とSGLT1のタンパク質は特異的抗体を使ったウエスタンブロッティング法で検出した。 空腸のBmal1タンパク質発現量は午後9時がもっとも高く、午前3時、午後3時、午前9時の順に低くなった。そして、午後9時と午後3時、午後9時と午前9時の間には差を検出した(P<0.05)。 空腸のBmal1 mRNA発現量は午後3時と午後9時が高く、午前3時と午前9時では低かった。供試豚の飼料摂取は午後1時から午後7時の間に活発だった。このことから、飼料摂取が活発になると空腸ではBmal1のmRNA発現量が高くなり、タンパク質の翻訳が開始される。そして、mRNA発現量が高くなってから数時間遅れてタンパク質発現量が高くなったようである。空腸の時計遺伝子の発現は飼料摂取の日内変動の影響を強く受けることを示唆する結果となった。 空腸のSGLT1タンパク質発現量は引き続き解析を継続する予定にしている。さらに、回腸のBmal1とSGLT1のタンパク質発現量の解析も実施する。
|