研究実績の概要 |
我々は、偽妊娠豚に持続性エストロジェン製剤を投与することにより人為的に泌乳を誘起することが可能であり、得られた乳中には初乳と同等のIgGが含まれていると報告している(Noguchi et al., 2020)。そこで本研究では、より効率的に泌乳を誘起し、かつ、乳量を確保するための条件を検討した。 乳腺発達促進を目的としたエストロジェン製剤の投与条件とオキシトシンの投与の有無が泌乳誘起効率及び泌乳量に及ぼす影響を調査した結果、エストラジオールプロピオン酸エステル(EDP)を泌乳誘起処置前7(33.3%, n=6)あるいは14日目(50.0%, n=6)に1回のみ投与した区と比較して、それぞれ投与した区(87.5%, n=8)では泌乳誘起効率が改善したが、1日あたりの平均搾乳量は差を認めなかった。また、オキシトシンを投与した豚では泌乳誘起率が80.0%(n=10)であったのに対し、投与しなかった豚の泌乳誘起率は40%(n=10)であり、オキシトシンの投与は1日あたりの平均搾乳量を改善させることも明らかとなった(オキシトシン無処置区 vs. オキシトシン投与区=41.6±8.5 mL/日 vs. 117.7±24.0 mL/日)。 続いて、異なるエストロジェン製剤の投与条件が泌乳誘起効率及び泌乳量に及ぼす影響を調査した結果、安息香酸エストラジオール(EB)を泌乳誘起処置前10, 7及び4日目に投与した場合の泌乳誘起率(60.0%~66.7%)は、泌乳誘起前7~14日前にEDP単回投与したもの(0~53.8%)に比べて改善し、EB処置区の1日あたり平均搾乳量(78.9±16.0 mL/日)は、EDPを用いた既報(52.8±7.7 mL/日)に比べて増加した。 以上のことから、泌乳誘起前のEBの頻回投与と泌乳誘起後のオキシトシン投与の双方が偽妊娠豚の泌乳量改善に効果があることが示された。
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