【目的】自給粗飼料に立脚した日本型酪農の創成に向け、生涯の体質が形成され得る哺乳・離乳期をターゲットに粗飼料に早期順応させつつ、高い健全性と発育も促進させる新たな哺育育成コンセプトを立案した。この有効性と応用可能性を探るべく本研究では、「発酵牧草飼料」をスターター素材とする哺育育成飼養が、国内のスタンダードである濃厚飼料スターター給与飼養と比較して、子牛の発育、体質形成そして健全性にどのような影響を与えるかについて明らかにする。 【今年度の主な成果】強化哺乳条件下において、粗飼料スターター(発酵アルファルファ)を新生期から採食馴致し自発的採食により8週齢の離乳までに平均1kg DM/日採食させた子ウシ群と濃厚飼料スターター採食をさせた子ウシ群のルーメン機能遺伝子の発現比較解析を行った。ルーメンの発達およびルーメン粘膜細胞を揮発性脂肪酸(VFA)で刺激することにより発現が増強されるモノカルボン酸トランスポーター1(MCT1)およびCD147のmRNA発現量について、MCT1は両区で有意な差は確認されなかったが、CD147は粗飼料スターター区で有意に低く、濃厚飼料スターター区の67%の発現量であった。一方、尿酸トランスポーターであるUATおよびケトン体合成経路酵素であるHMGCS2のmRNA遺伝子発現には有意な差はなかったことから、ルーメン機能の発達レベルに大きな違いはないと考えられた。次にLPS結合タンパクやLPS認識受容体TLR4の発現解析を行った結果、両遺伝子発現において濃厚飼料スターター区の方が発現が高い傾向があり、ルーメン内の菌毒素の暴露状態および応答が異なっている可能性が示されたことから、今後免疫系の解析を追加していく必要がある。
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