研究課題/領域番号 |
18K05960
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
室谷 進 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, ユニット長 (50355062)
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研究分担者 |
後藤 貴文 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (70294907)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ウシ / 代謝プログラミング / 胎仔 / 骨格筋 / IUGR |
研究実績の概要 |
本研究では、代謝プログラミング研究のために栄養条件を通常の120%または60%に設定した飼養条件下の黒毛和種妊娠牛の胎仔を分析対象としている。昨年度までに、飼養条件(各♂4頭)間で重量に差が生じた胎仔骨格筋(最長筋)で複数のmicroRNAに発現差が認められ、その発現調節の対象となる標的遺伝子について、PCRによりmRNA発現を調べた結果、低栄養条件下の胎仔で発現が増加したmiRNAの標的遺伝子の多くについて、その発現が抑制されず増加する傾向を示した。このことは、低栄養条件下の胎仔における遺伝子のmRNA発現がmiRNAによる制御下にないことを示唆すると考えられた。そこで、遺伝子発現マイクロアレイ解析による網羅的なmRNA発現解析を実施し、どの遺伝子が今回の低栄養条件による影響を大きく受けているか調査した。最長筋と脂肪組織についての遺伝子発現プロファイルを取得し、最長筋については、得られたマイクロアレイ解析データを用いて遺伝子オントロジー解析およびKEGGパスウェイ解析を行い、低栄養条件下の胎仔最長筋においてどの分子細胞生物学的現象に影響があるか調査した。その結果、免疫系のほか、解糖系を含むエネルギー代謝、血管新生等に関連する遺伝子の発現が低下する傾向があることがわかった。これらの遺伝子群には、miRNAの標的として予測された遺伝子はほとんど含まれていなかった。以上から、低栄養条件下の黒毛和種牛胎仔骨格筋では、エネルギー代謝、血管新生等に関する遺伝発現が負の影響をうけることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果を考慮して仮説を見直し、解析対象を含む方針を一部転換し、2020年度では低栄養条件下の胎仔骨格筋内の遺伝子の網羅的発現解析を中心に研究を進めた。遺伝子オントロジー解析を併用した結果、妊娠牛の低栄養が胎仔骨格筋に及ぼす影響に関する現象を把握する等、一定の成果を得ている。年度当初に予定した血漿のmiRNAについては、発現プロファイルの解析により、数種のmiRNAに栄養条件による発現の差があることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に取得した低栄養条件の胎仔最長筋における遺伝子発現プロファイルをもとに、発現変動の大きい遺伝子を中心としたPCRによる発現のヴァリデーションを行う。また、可能であれば、メタボローム解析による骨格筋成分の解析を行うことで表現型を把握することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:研究の方針変更により試薬等の費用が変わったこと、サンプリングの器材や試薬の調達の際に低価格なメーカー等の選定により費用を低く抑えることができたこと、マイクロアレイ解析等にメーカーのキャンペーン等を効率よく活用できたこと等があったため。 次年度の使用計画:オープンアクセス誌への論文投稿費用や実験に必要な消耗品に充てる予定である。
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