研究課題/領域番号 |
18K05961
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
櫛引 史郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主席研究員 (30355218)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 子牛 / ルーメンアシドーシス / クラフトパルプ / エンドトキシン |
研究実績の概要 |
本研究課題は、離乳移行期の乳用子牛に給与するスターターの一部を木材クラフトパルプ(KP)に置き換えて、ルーメン発酵、代謝内分泌機能、および成長への影響を検討し、KPの飼料素材としての有効性を明らかにする。離乳移行期はスターターを多給することから、成牛と同様に亜急性ルーメンアシドーシス(SARA)が発生する。KPは木材チップからリグニンを除去した素材であることから、ルーメン微生物が利用できるセルロースを主成分とする高繊維かつ高エネルギー素材である。KPをスターターの一部と置き換えることにより、エネルギー水準を落とさずに繊維給与割合を高めることが出来、SARAの発生とルーメン内エンドトキシン(LPS)による炎症カスケードの制御につながる。 ホルスタイン種子牛16頭(雌8頭、雄8頭)を用いた。試験期間は3週齢から10週齢までの7週間とした。供試牛(体重55.3±0.9kg)は、試験開始時に対照区またはKP区(各区、雌4頭、雄4頭)へ無作為に配置した。KP区のスターターは、対照区と同品の10%をKPで置き換えた。哺乳は全乳を用い、給与上限を9L/日として1日あたり体重の11%量を給与した。6週齢で哺乳量を2L/日に減らし、7週齢で離乳した。スターターおよびカットチモシーは、週齢に合わせて食べきれる量を給与した。体重は週1回計測し、日増体量(DG)を算出した。 試験期間におけるDGは、KP区が対照区を10%程度上回り(p<0.1)、離乳後の7~10週齢の期間だと約15%高まった(p<0.05)。ルーメン液中LPS活性は、KP区が対照区に比べて半減した(p<0.05)。また、ルーメン液中VFAにおいて、KP区の酢酸割合が増加し(p<0.1)、酢酸/プロピオン酸比比はKP区で有意に低くなった。血漿中急性期蛋白およびサイトカイン濃度など炎症関連項目に差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子牛の出生に合わせて試験を開始するため、現在における供試頭数は当初計画の約80%である。血液と胃液の一部サンプルについては、アッセイ間変動を避けるために、1次試験(通常哺乳)終了後に分析を実施する。KPの混和によって糞スコアも低く推移していることから、当初の仮説であるKPの効果は発現していると考えられる。また、分析の途中であるが、血漿中インスリンとグルカゴン濃度にKPの影響が示唆された。胃液VFAの変化と合わせて解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
通常哺乳の1次試験を今夏で終了し、分析に移行する。特に、成長ホルモンおよびIGF-1の測定を優先する。また、来年度からは、2次試験である高栄養哺乳でのKP給与試験を開始する。2次試験では哺乳量の増減幅が大きくなるため、KPを含むスターターと粗飼料の固形飼料の採食量について、詳細に測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
子牛の出生が計画よりも少なく、1次試験の終了と2次試験の開始が遅れた。そのため、1次試験の分析に使用する試薬類ならびに2次試験の給与試験に使用する資材の購入が無かった。これらの試薬と資材は、来年度に購入予定である。
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