本研究課題は、離乳移行期の乳用子牛に給与するスターターの一部を木材クラフトパルプ(KP)に置き換えて、ルーメン発酵、代謝内分泌機能、および成長への影響を検討し、KPの飼料素材としての有効性を明らかにすることである。 飼養試験には、ホルスタイン種⼦⽜24頭を⽤い、KPを給与するKP区(12頭)とKP無給与の対照区(12頭)に配置した。試験期間は3週齢から12週齢までの9週間とし、6週齢で減乳、7週齢で完全離乳した。KPは、3週齢時に人工乳の現物3%を置き換え、その後徐々に増量しながら10週齢時には10%を置き換えた。 両区の体重および日増対量(DG)に差は認められなかった。血漿中の生化学項目ならびに成長関連ホルモン(成長ホルモン、インスリン様成長因子、グルカゴン、インスリン)にも両区に有意差は認められなかった。胃液中の成分では、KP区の揮発性脂肪酸(VFA)濃度における酢酸割合が対照区よりも有意に増加した。また、胃液中エンドトキシン(LPS)活性レベルが、KR区で低下する傾向(p<0.1)を示した。また、血漿中の急性期タンパク質(LPS結合蛋白、ハプトグロビン、血清アミロイドA)における区間差は認められなかった。 両区における反芻時間は、KP区が有意に増加した。 以上より、人工乳の一部をKPで置き換える場合、ルーメン発酵におけるアシドーシスリスクは低下するものの、子牛の成長には影響しないことが明らかになった。本研究では、KPを人工乳に組み込んだ飼料を製造して給与試験も行っているが、その場合では成長亢進と胃液LPSの顕著な低減が認められている。これは、KP単独では嗜好性が低いことが影響している。KPを人工乳に組み入れるにはコストが増加するため、KPの離乳移行期での利用に関しては今後の幅広い検討が必要と考えられた。
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