研究課題/領域番号 |
18K05966
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山崎 真大 岩手大学, 農学部, 教授 (40322846)
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研究分担者 |
内田 直宏 岩手大学, 農学部, 助教 (00784315)
井口 愛子 鳥取大学, 農学部, 講師 (90777020)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Babesia gibsoni / 次世代シークエンサー / ジミナゼン耐性株 / リアルタイムPCR |
研究実績の概要 |
Babesia gibsoniが薬剤耐性を獲得するメカニズムに関して、本年度は培養系で維持しているジミナゼン製剤に対する耐性を持った株を利用し、薬剤感受性の野生株と比較することでその薬剤耐性メカニズムを明らかにすることを目的に研究を実施した。上記のB. gibsoniのジミナゼン耐性株と野生株を大量培養を行い、原虫を回収した上でRNAを抽出し、それを資料として次世代シークエンサーによる解析を実施した。結果としてB. gibsoniのRNAから1,374個のcontigが得られ、ジミナゼン耐性株と野生株におけるmRNA量を比較したところ、ジミナゼン耐性株において野生株よりも発現量が増加している遺伝子、減少している遺伝子、変化のない遺伝子の3郡に分けることが可能であった。今年度はこれらのうち発現量が増加している遺伝子に着目し、中でも特に発現量が顕著に増加していると思われる2つの遺伝子についてさらに解析を進めることにした。これらの遺伝子についてBLASTサーチを行なったところ、原虫類において類似の遺伝子がいくつか検出されたがいずれも機能などが明確になっていない遺伝子であったことから、これらの遺伝子をcontigの番号からBg279とBg304と呼称し、まずはそのmRNA全長の構造を明らかにすべく、これらの遺伝子についてダイレクトシークエンス法により塩基配列の解析を実施している。さらに、これらの発現量が本当に増加しているかを確認するために、解析できた塩基配列を元にリアルタイムPCRの実験系を作成し遺伝子発現量を比較したところ、次世代シークエンサーの結果と同様に、ジミナゼン耐性株における発現量の増加が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の目標である次世代シークエンサーによる解析は、ジミナゼン耐性株においては実施に成功し、解析も達成できたことから研究はほぼ予定通りに進行している。ただし、アトバコン耐性株に関しては、解析をまだ実施していないので、こちらは来年度に可能であれば次世代シークエンスによる解析を実施したい。また、ジミナゼン耐性株についてはコンピュータによるデータ解析もほぼ成功したと思われ、薬剤耐性の獲得機構に関与すると思われる遺伝子2つの検出に成功したと思われる。現在、これらの遺伝子についてその塩基配列の解析を実施しているほか、リアルタイムPCRによる遺伝子発現量の変化の確認が実施できていることから、この点ではジミナゼン耐性株については当初の計画よりも早く研究が進んでいると思われる。以上のことから、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在解析している二つの遺伝子についての全長の塩基配列の解析を推し進め、それを完了するとともに、それらの構造をジミナゼン耐性株と野生株とで比較し、塩基配列に変化が起こっていないかについても解析を実施する。さらに全長が明らかになった二つの遺伝子について再度BLASTを用いた検索を行い、原虫だけでなく他の寄生虫、動物、植物と比較することで、これらの遺伝子がどのような役割を持った遺伝子かについて検討を行う予定である。その上でこれらの遺伝子がジミナゼン耐性獲得においてどのような役割を担っているかを明らかにする。また、アトバコン耐性株についても大量培養を実施し、RNAを抽出することで次世代シークエンサーによる解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究は順調に進行したため、少し予算の余裕を持って年度内の計画を達成することができた。このため、次年度に使用する試薬などを購入するために今年度の予算を少し残し、次年度に使用することにした。このため次年度使用額は次年度において次世代シークエンサーの試薬など高価な試薬を購入する際に合わせて使用することとした。
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