レミフェンタニルは、ミューオピオイド受容体を介して鎮痛作用を発揮するオピオイドで、特に犬と猫においてその効果が異なることが知られている。猫では、犬に比べてレミフェンタニルの鎮痛効果が弱いが、その理由は明らかでない。この違いの原因を探るため、犬と猫の血清中の非特異エステラーゼ活性について調査が行われた。エステラーゼは、レミフェンタニルなどのエステル結合を持つ薬物の分解に関与する酵素である。
本研究では、犬、猫および豚の血清から非特異的エステラーゼに分類されるParaoxonase1(PON1)、Butyrylcholinesterase(BChE)およびCarboxylesterase(CES)の活性を測定し、比較検討が行われた。特に猫にはCESが存在し、これが犬よりもレミフェンタニルの効果が弱い可能性の一因と考えられた。また、猫と犬のレミフェンタニルの薬物動態を比較するために、犬の血漿を使用してレミフェンタニル濃度測定法が確立され、麻酔中の犬にレミフェンタニルを投与した際の薬物動態も解析された。
結果として、レミフェンタニルは投与後4分で最高血漿中濃度に達し、その後は速やかに低下した。薬物の全身クリアランスは比較的低く、分布容積は犬の血液量に近い値を示した。これにより、レミフェンタニルの分布が血液中に限られ、組織への移行が少ないことが示唆された。これらの研究は、動物種間でのレミフェンタニルの薬物動態や薬力学の違いを理解する上で重要な情報を提供するものである。
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