研究実績の概要 |
犬リンパ腫細胞株4株(CLBL-1, CLC, Ema, 17-71)および健常犬末梢血単核球(PBMC)を材料として、CE-TOFMSによりメタボローム解析を実施した(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社)。その結果、CLCにおける尿素回路の活性化や、CLBL-1, Emaにおけるフマル酸、コハク酸の蓄積、CLBL-1, 17-71における2-hydroxyglutaric acid(2-HG)の蓄積などが明らかとなった。 我々は上記のうち、神経膠芽腫や急性骨髄性白血病等で重要な役割を担っていると報告されている2-HGに着目した。2-HGは通常、細胞に蓄積することはないが、イソクエン酸脱水素酵素(IDH)の変異により生成され、蓄積することでDNAやヒストンのメチル化の異常を生じ、腫瘍細胞の発生・増殖に有利に働くことが報告されている。また、犬においてこの代謝物と腫瘍の関係についての報告はない。 2-HGの蓄積を起こす変異はIDH1およびIDH2に起こることが知られているため、まず初めに上記の犬リンパ腫細胞株および健常犬PBMCにおけるこれらの遺伝子の変異解析を行った。cDNAを材料としたPCRおよび大腸菌JM109に対するトランスフォーメーションを行い、IDH1のクローニングを実施した。得られたクローンよりサンガーシークエンス法を用いてIDH1の配列解析を実施したが、いずれのリンパ腫細胞株においても変異は認められなかった。IDH2はPCRを実施したものの、良好な結果は得られなかった。これはデータベースに報告されている配列が犬では不完全なものであることに起因すると考えられる。
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