研究課題/領域番号 |
18K05973
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
三宅 在子 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (20548622)
|
研究分担者 |
木村 透 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (80419027)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | FeLV / 受容体 / 増殖能 |
研究実績の概要 |
ネコ白血病ウイルス(FeLV)は家猫に水平伝播し、リンパ腫、急性骨髄性白血病等の予後不良な疾患をもたらす。ワクチンは存在するが未だ制圧には至っておら ず、FeLVに関するより幅広く詳細な解析が望まれる。FeLVはウイルス粒子の外皮蛋白(Env)と感染に用いる受容体の違いによりサブグループ分類されるが、各 サブグループの病原性には違いがあるとの報告がある。受容体の違いは感染標的の拡大と感染による細胞の生理機能への影響の変化をもたらし、結果として病原 性の違いを生み出すと考えられる。我々はこれまでに、既知のFeLVサブグループには属さない新規のFeLV Env(FeLV TG35-2)を同定した。更に、その受容体として Reduced folate carrier(RFC)を同定した。本研究では、この新規のFeLVの病原性を明らかにすることを目的としている。当該年度は、動物感染実験のため、当FeLVの完全長分子クローンを構築しその感染性を確認した。その結果、当クローンの血球系細胞株における増殖性はFeLV-A(家猫で水平伝播するサブグループ)よりも高いことを明らかにした。更に、上記FeLVに加え、FeLV-D(FeLV-Aと家猫の内在性レトロウイルスとの組み換えウイルス)の受容体探索と病原性の解明にも取り組んだ。その成果として、FeLV-Dの受容体が同定された。更に、当受容体は他の動物種を宿主とするウイルスも使用することが報告されていることより(他グループの研究による)、それらウイルスとFeLV-Dとの相互作用の可否を検討した結果、両者の干渉作用が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規FeLV(FeLV TG35-2)の病原性を明らかにするため、FeLV TG35-2と受容体の相互作用やFeLV TG35-2の宿主細胞の生理機能に与える影響に ついて詳細な解析を行い、個体レベルでの病原性を明らかにするためFeLV TG35-2の動物感染実験を行うことを計画している。当該年度は、当FeLVの分子クローン構築とその増殖能についての確認がなされ、動物感染実験を実施するための準備が整った。当結果は、当該年度において学会発表している。一方でFeLV-Dに関し、これまで未同定だった受容体の同定に至り、且つFeLV-Dが干渉作用を示す他の動物種のウイルスも明らかとなった。FeLV-Dについては当初予定していた計画に新たに加わった部分であるが、FeLV全体としての新たな側面を知ることとなり、FeLV TG35-2の比較対象となる点からも、本研究にとって進展した部分と考えられる。以上より、当研究はおおむね 順調に進展していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、当該年度おおむね当初の計画にのっとり進められた。今後も当初の計画 を踏まえ、当該年度に達成されなかった部分の解析および次年度予定していた解析を進める。次年度は動物感染実験を計画しているが、本実験に関しては、当初の計画にあったFeLV TG35-2に加え、当該年度に新たな知見が得られたFeLV-Dについても行い、より多角的にFeLVの病原性を明らかにしたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の使用の端数として生じた金額であり、特別な理由は無い。
|