研究課題
前年度までにIL-19遺伝子欠損マウス(IL-19KO)は野生型マウス(WT)と比べて、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)様の線維化が増悪することを報告した。本年度は、このメカニズムを明らかにする目的で、in vitro実験系を用いた解析を実施しIL-19の脂質代謝系における役割を明らかにした。HepG2細胞をパルミチン酸およびIL-19で処置した後、中性脂肪量、コレステロール量、およびATP産生量を測定した。また、定量リアルタイムPCR(QPCR)およびウエスタンブロッティングの解析にも供した。HepG2細胞へのIL-19添加により、パルミチン酸により増加した中性脂肪量およびコレステロール量は減少した。IL-19が脂質生成の抑制または脂肪分解の亢進に関与する可能性が考えられたことから、脂肪酸や脂質生成に関与する因子をQPCRで解析した。IL-19添加はパルミチン酸による、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)1、脂肪酸合成酵素(FASN)、ステアロイル-CoAデサチュラーゼ(SCD)1および5、ステロール調節要素結合タンパク質(SREBP)-1cおよび2の各mRNA発現量を抑制した。しかしながら、CD36のmRNA発現量には明確な変化は見られなかった。IL-19により脂質生成能が低下する可能性が示されたことから、脂肪酸の利用先として、beta酸化によるATP産生に対するIL-19の影響を検討したところ、IL-19添加によりATP産生量は増加した。続いて、脂質生成低下およびbeta酸化亢進へと繋がるIL-19シグナル伝達経路について解析したところ、IL-19添加によりAMPKのリン酸化が促進されることを明らかにした。以上の結果より、脂質代謝におけるIL-19の役割を明らかにした。今後、線維化形成における役割についてもさらに解析を実施する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cells
巻: 10 ページ: 3513
10.3390/cells10123513