研究課題/領域番号 |
18K05979
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山地 佳代子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40554275)
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研究分担者 |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マダニ / 吸血性節足動物 / 標的認識システム |
研究実績の概要 |
血液獲得を目的とした宿主への接近と、吸血後の逃避は吸血性節足動物において普遍的なシステムである。ヒトや家畜に甚大な被害をもたらすマダニでは昆虫と異なり触覚を欠き、更に進化の過程で目を退化させたことから視覚系の欠損が認められる。したがって、標的認識システムにおいて蚊などの吸血性節足動物とは完全に異なる独自の進化・適応を遂げたと考えられるが、宿主探知を支える分子基盤は明らかになっていない。マダニは形態学的研究から、第一脚にあるハラー氏器官に「温度・湿度感覚を受容する感覚子」が局在すると推測されている。そこで、日本優占種であるフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)のハラー氏器官で発現する遺伝子群と、宿主捕捉体勢を示した野外フタトゲチマダニで発現する遺伝子群のトランスクリプトーム解析により標的認識システムに関与する分子群の探索を行った。その結果、ショウジョウバエからヒトまで温度受容メカニズムに関わる主要分子として知られるTRP(Transient Receptor Potential)チャネル及び嗅覚受容体(OR)のホモログが同定された。現在、これらの候補遺伝子群の機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マダニは飛翔能力を持たずとも正確無比な吸血行動により血液獲得を達成することから、標的認識システムはマダニの生存基盤である。30年度の研究により、マダニ標的認識システムの分子基盤が一部解明された。特に、昆虫等で温度受容メカニズムに関与しているTRPチャネルをマダニでも標的認識に用いている可能性が示唆されたことから、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
マダニの標的認識システムの原理解明を目的とし、モデル生物であるショウジョウバエを用いて候補分子機能解析を行う。CRISPR/Cas9システムを用いて、ショウジョウバエにマダニ候補分子を挿入させた系統を確立、温度選択性すなわち忌避・誘引する温度域値を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね研究計画通りに使用したが、約1万5千円の差額が生じた。
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