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2018 年度 実施状況報告書

NPを巻くインフルエンザウイルスのvRNA分節はどのように相互作用を起こすのか

研究課題

研究課題/領域番号 18K05980
研究機関日本大学

研究代表者

鈴木 由紀  日本大学, 生物資源科学部, 講師 (30712492)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードインフルエンザウイルス / ゲノムパッケージング / RNA二次構造 / 相互作用
研究実績の概要

A型インフルエンザウイルス(IAV)は、異なる遺伝子をコードする8本の分節型vRNAが1つのウイルス粒子に取り込まれることにより、感染性のウイルス粒子が産生される。このvRNAの取り込み機構(ゲノムパッケージング)はヌクレオプロテイン(NP)に巻きついた1本鎖のvRNAが異なるvRNA分節と相互作用することによって起こると推測されている。本研究はNPを巻くvRNAがRNA-RNA相互作用を起こすゲノムパッケージング機構を明らかにすることを目的に、今年度はHAセグメントに注目をしたHAセグメントのパッケージングシグナル領域の配列解析ならびに二次構造予測、およびRNA-RNA相互作用を解析するためのRNA合成などを行なった。
H1-16亜型をそれぞれ解析した結果、亜型間で共通してHAの5'末端領域は保存されていたが、亜型内で保存されている塩基配列やそのゲノムポジションは亜型間で異なっていた。例えば、5'末端領域は連続したGCリッチなモチーフ配列が保存される傾向にあったが、GCの配列パターンや長さは亜型間で異なっていた。HAセグメントのパッケージング嗜好性は亜型間で異なることが報告されていることから、このような配列パターンの違いがパッケージングの思考性に関与している可能性が示唆された。また、HAセグメントの二次構造予測を行なったが、どのHA亜型においても5'末端領域で二次構造は予測されなかった。従って、HAセグメントは二次構造を形成しない状態でその他のvRNA分節と相互作用している可能性が示唆された。
今後は、予測されたGCリッチモチーフがHAのゲノムパッケージングに関わることを実験的に証明する。また、その他のセグメントにおけるRNA二次構造の解析、ならびにB、C、D型インフルエンザウイルスのパッケージングシグナルを解析し、IAVとの比較解析を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

H1-16亜型のHA配列の解析を行い、IAVのHAの5'末端領域でHAセグメントのゲノムパッケージングに関わる可能性があるGCリッチなモチーフ配列を同定し、そのモチーフ配列の塩基パターンや5'末端内におけるゲノムポジションはHA亜型間で異なることを明らかにした。また、この5'末端はどのHA亜型においてもRNA二次構造を形成しない可能性を明らかにした。
そこでHA 5'末端領域のGCリッチモチーフがその他のvRNAセグメントのRNA-RNA相互作用に関わることを明らかにするために、今後、RNAをハイブリダイズさせるin vitro実験を行う予定である。現在、その実験準備を進めており、H1、H3およびH4亜型のHAおよびその他のパッケージングシグナルをコードするRNAの合成を行なっているが、全てのセグメントのRNAを合成する作業に時間がかかっており、研究の進捗がやや遅れている。
また、より多くの異なる亜型のIAV配列を用いた実験解析を進めるために、カモおよびウマから分離されたIAVの塩基配列を決定を同時に試みている。現在、次世代シーケンサーで塩基配列を決定するためのライブラリ調整が完了したので、近日中にこれらIAVの塩基配列が決定する予定である。

今後の研究の推進方策

1. HAセグメントの5'末端領域で保存されているGCリッチモチーフがその他のvRNA分節との相互作用に関わること、また、HAセグメントと相互作用するセグメントの種類を明らかにするために、in vitro合成したRNAを用いてRNAのハイブリダイズ実験を行う。その際には、合成したH1、H3、H4亜型の全セグメントの合成RNAを実験に用いる。
2. ゲノムパッケージングに関わるモチーフ配列に対する相補的なLNAオリゴを細胞にトランスフェクションすることによって、IAVのゲノムパッケージング効率が低下することをIAVの感染実験によって明らかにする。
3. ゲノムパッケージングに関わる可能性があることが予測されたモチーフ配列の塩基配列を改変したIAVを作製し、ゲノムパッケージング効率が低下することを確認する。
4. その他のセグメントにおいても網羅的なRNAの二次構造予測を行い、パッケージングに関わるRNA二次構造の探索を行う。パッケージングシグナルにRNA二次構造領域が予測された場合、上記実験1-3の実験を行うことにより、ゲノムパッケージングに関わることを確認する。
5.新たに B型、C型、D型インフルエンザウイルスのパッケージングシグナルの探索を行い、IAVのパターンと比較解析する。

次年度使用額が生じた理由

RNA合成に時間がかかっており使用予定の試薬の購入が出来なかった為、次年度使用額が生じた。
次年度はRNAのハイブリダイズ実験、感染実験、次世代シーケンサー解析等を行う為、これらの実験に必要な実験材料の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] An endogenous adeno-associated virus element in elephants.2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Y, Shimazu T, Murata K, Itou T, and Suzuki Y.
    • 雑誌名

      Virus Res.

      巻: 262 ページ: 10-14

    • DOI

      10.1016/j.virusres.2018.04.015.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] MiR-200b attenuates IL-6 production through IKKβ and ZEB1 in human gingival fibroblasts.2018

    • 著者名/発表者名
      Matsui S, Zhou L, Nakayama Y, Mezawa M, Kato A, Suzuki N, Tanabe N, Nakayama T, Suzuki Y, Kamio N, Takai H, and Ogata Y.
    • 雑誌名

      J Appl Microbiol.

      巻: 67 ページ: 965-973

    • DOI

      10.1007/s00011-018-1192-1.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Next-generation sequencing analysis of Bacterial flola in bovine Prototheca mastitic milk2018

    • 著者名/発表者名
      Kano R, Kobayashi Y, Nishikawa A, Murata R, Itou T, Ito T, Suzuki K, and Kamata H.
    • 雑誌名

      Med. Mycol. J.

      巻: 59 ページ: E41-E46

    • DOI

      10.3314/mmj.18-00004.

    • 査読あり
  • [学会発表] 分子進化解析から見えてくるインフルエンザウイルスの感染戦略2018

    • 著者名/発表者名
      小林由紀
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] アフリカ獣上目動物におけるボルナウイルス由来エレメントの蛋白質機能.2018

    • 著者名/発表者名
      小林由紀
    • 学会等名
      日本進化学会 第20回大会
  • [学会発表] ユビナガコウモリに内在するボルナウイルス由来遺伝子は潜在的に機能性RNA結合タンパク質をコードする2018

    • 著者名/発表者名
      向井八尋, 堀江真行, 小林由紀, 小嶋将平, 前田健, 朝長啓造.
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン電荷の進化2018

    • 著者名/発表者名
      小林由紀、鈴木善幸
    • 学会等名
      日本遺伝学会 第90回大会

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公開日: 2019-12-27  

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