研究課題/領域番号 |
18K05981
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
山田 一孝 麻布大学, 獣医学部, 教授 (80292093)
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研究分担者 |
斑目 広郎 麻布大学, 大学病院, 教授 (20173768)
金井 詠一 麻布大学, 獣医学部, 助教 (20632219)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Ai / 死亡時画像診断 / ウシ / イヌ / ネコ / 骨折 / 展示動物 |
研究実績の概要 |
近年,人医療の院内死亡症例や法医学領域において,死亡時画像診断が死因究明の手段として実施されている. 2020年度は,経済的価値の高い展示動物であるキングペンギンの死亡時画像診断を実施した.CT所見の気嚢の萎縮と肺の浸潤像から,呼吸器疾患の可能性が高いことがわかり,アスペルギルス症,鳥結核が死因の鑑別診断リストに挙がった.また,気嚢の萎縮の所見から,気嚢の体積が呼吸器疾患の重症度判定の手ががりになると考えられた.病理解剖前にアスペルギルス症を予測することで,真菌培養の事前準備など円滑な病理解剖作業の実施が可能となった.また,ヒトにも感染するアスペルギルス症の可能性を病理解剖前に解剖担当者に伝えることで,感染防御の対策をとることができた.死亡時画像診断は,死因の究明のみならず,円滑で安全な病理解剖の実施にも貢献した. また,麻布大学で病理解剖を実施した牛の死亡時画像診断を収集した.CT検査で,生前にはわからなかった肋骨骨折を診断することができた.頭部が腫脹した症例では,病理解剖前に,感染症か,外傷か,腫瘍か,の判断が可能であり,円滑な病理解剖を実施することができた. さらに,警察から不審死動物の死因鑑定を依頼された症例について,病理解剖前にCT検査を実施した.腐敗が顕著であった症例は,CT所見から死因の確定はできなかった.一方,頭部に強い衝撃が加わったと考えられる頭蓋骨骨折を病理解剖前に判断することが可能であった. これらの結果から,死亡時画像診断は,病理解剖前に病態の情報を得ることに有用であることが明らかとなった.引き続き,獣医療における病理解剖前の死亡時画像診断の知見を増やし,死亡時画像診断の有用性と限界を明らかにしていく計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キングペンギンの死亡時画像診断についての論文が掲載された.大動物(牛,馬)の死亡時画像診断の有用性をアイソトープ放射線研究発表会で発表した.現在,COVID-19の影響で,診療を停止しており,警察症例の収集が遅れている.これまでに収集した警察症例の結果をまとめる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
Ai所見と剖検所見の一致と差異,死後変化と死因判定に意義のある所見のデータベースを作成する.このデータベースを用いて,動物におけるAiの有用性と限界を明らかにし,精度の高いAi診断法を確立する.今後,警察症例の収集に注力し,日本で立ち遅れている「法獣医学」の新分野を構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
死亡時画像診断のCT検査の費用を別予算から支出したため,当初の予定よりも使用額が少なくなった.今年度は,予算を計画的に執行する予定である.
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