長寿化に伴い、ペット犬の潜在的骨疾患は増加傾向にある。肥満において脂肪細胞から分泌されるアディポカインが骨吸収の責任細胞である破骨細胞を活性化する、脂肪細胞ではアクチビンBが多く産生される、破骨細胞形成におけるサイトカイン反応性には種差がある、などの事実から、①『脂肪組織で高発現するアクチビンBがイヌ破骨細胞分化・活性を制御している』との仮説を立てた。この検証をすること、さらに、②イヌアクチビンB遺伝子の解析を進めている際に、新規のバリアントを見つけた。この遺伝子バリアントの脂肪組織における発現制御とその機能を解明すること、③これらの解析を通して、脂肪組織がイヌ破骨細胞 の骨代謝調節に及ぼす影響に関する基礎的理解を得ることが研究の目的である。 これまでに、イヌアクチビンβBに関して407アミノ酸からなる長いバリアント(Ca InhbB407)と320のアミノ酸からなる短いバリアント(Ca InhbB320)を単離した。これらを発現ベクターに組み込み、ウェスタンブロット法によりCa InhbB407からの成熟型アクチビンβBタンパク質の存在を確認した。Ca InhbB320は発現しなかった。イヌアクチビンB(Ca InhbB407)は、ヒトやマウスのアクチビンBと同様に、リン酸化Smad2/3を介した応答遺伝子発現(アクチビン/TGFβ経路)を強く促進し、またリン酸化Smad1/5/8に応答する遺伝子の転写(BMP経路)も促進することをレポーターアッセイにより示した。前者の反応には、イヌMDCK細胞においてはI型レセプターとしてALK7が関与していた。これらの実験データによる国際雑誌への投稿論文を準備中である。イヌアクチビンBは、RANKL 刺激によるRAW264.7細胞の破骨細胞分化に影響を与えなかった。
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