研究課題/領域番号 |
18K05988
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
山岸 則夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (30281877)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳牛 / 分娩 / 獣医臨床生化学 / 骨代謝マーカー / オステオプロテゲリン |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、乳牛の分娩後低カルシウム(Ca)血症の罹患リスクを検出する臨床バイオマーカーを探索し、確実な予防法の確立のための基盤を築くことである。今回、臨床バイオマーカーの候補として破骨細胞分化抑制因子であるオステオプロテゲリン(OPG)に着目し、本年度は基盤データ収集の一環として、乳牛の分娩前後の血中動態を解析した。 ホルスタイン種の初産牛9頭と経産牛9頭から分娩予定日3週間前(d -21)、分娩直後(d 0)、分娩12時間後(d 0.5)、2日後(d 2)、5日後(d 5)に採血し、血中のOPG濃度ととに、血中の酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP5b)およびカルシウム(Ca)濃度を測定した。 供試牛は全て健常分娩し、分娩後低Ca血症を発症することはなかった。血中Ca濃度は、経産牛ではd -12と比較してd 0からd 2にかけて有意に低下した(P <0.01)が、初産牛では変化なく正常範囲内の値で推移した。血中OPG濃度は、経産牛ではd -12の値が初産牛に比べて有意な高値を示した(P <0.01)が、d 0からd 5では有意に低下した(P <0.01)。初産牛では血中OPG濃度は分娩前後の変動はなかった。血中TRAP5b濃度は、経産牛ならびに初産牛ともにd -21の値よりもd 0 とd 0.5で有意に増加した(P <0.01)が、それらの濃度は初産牛の方が有意に高値であった(P <0.05)。 血中TRAP5b濃度は破骨細胞の数的変化の指標であり、OPGは破骨細胞の分化抑制因子である。今回の結果から、骨代謝が活発な初産牛では分娩前後における破骨細胞の分化抑制は低く保たれるが、経産牛では妊娠末期に破骨細胞の分化抑制は高く、分娩後にその抑制が解除されることが推察された。 以上、血中OPG濃度は分娩前後の乳牛の破骨細胞の分化動態を示す指標になることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、最初の2年間(2018~2019年度)で、健常牛の分娩前後と各泌乳ステージにおける血中および乳中のOPG濃度ならびに乳中の乳腺上皮細胞のOPG遺伝子発現量を解析する予定である。分娩前後ならびに各泌乳ステージの各乳牛からの材料収集(血液および乳汁)は計画的に進んでおり、血液および乳汁の解析についても開始したところである。したがって、進捗状況は、「おおむね順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、採取血液について一般的な血液生化学検査を実施するとともに、血中および乳中のOPGおよびTRAP5b濃度を測定する。また、乳汁中の遠心沈殿物より分離した体細胞よりRNAを抽出し、OPG遺伝子の発現量解析を行う。今年度の課題として、リアルタイムRT-PCRのためのプライマー設計とPCR条件設定に一定の時間を要するものと考えられるが、同実験系の経験者に意見を求め、解析系を確立したい。
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