研究実績の概要 |
(1)妊娠末期牛58頭を未経産群(n=13)、初産群(n=20)、2産群(n=13)、3-5産(高産群, n=12)に分け、2産と高産群を乳熱牛(n=8)と非乳熱牛(n=17)に分類した。分娩前3週(-3wk)から分娩後5日(5d)までの血清のカルシウム(Ca)、酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP5b)、オステオプロテゲリン(OPG)、アルカリフォスファターゼ骨分画(ALP3)を測定した。全供試牛の解析では、血清Ca濃度は0dに全群で低下し高産群は他群に比べて低値を示した。TRAP5b活性は未経産群で終始高く0dで一過性に上昇した。ALP3活性は未経産群、初産群、2産群、高産群の順に終始高かった。経産牛の解析では、乳熱牛の0dの血清Ca濃度は非乳熱牛よりも低かった。TRAP5b活性は乳熱牛では0dと5dに、非乳熱牛では0dに増加した。乳熱牛の乾乳期のALP3活性は非罹患牛より低かった。ピアソン相関分析では乾乳期のALP3活性は、0dのCa濃度と中度の正の相関、産次数と高度の負の相関を示した。ROC分析では-3および-2wkのALP3活性が乳熱に高い判別能を有し乳熱の発症予測に有用と考えられた。 (2)分娩牛48頭から分娩後12時間以内の乳汁と血液を採取し、乳中および血清のOPG濃度、Ⅰ型コラーゲン架橋 N-テロペプチド(NTx)濃度、TRAP5b活性ならびに血清Ca濃度を測定した。供試牛の内訳は、未経産群20頭、初産群11頭、3-6産牛(経産群)17頭であり、経産群のうち6頭は分娩直後に乳熱を発症(乳熱牛)した。乳中OPG濃度は乳中NTx濃度や血清OPGおよびNTx濃度と高い相関を示したが、他の測定値との相関はなかった。高産歴群では、乳熱牛の乳中OPG濃度は非乳熱牛に比べ有意に高値であった。乳中OPG濃度は乳熱の発症を反映した所見と考えられた。
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