研究課題/領域番号 |
18K05989
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
木崎 景一郎 岩手大学, 農学部, 教授 (40337994)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロRNA |
研究実績の概要 |
令和2年度は、昨年度の研究結果を基に妊娠関連糖タンパク質(PAG)ファミリーのPAG2に着目して、栄養膜細胞における栄養膜特異的マイクロRNA(miRNA)による制御の可能性を検証した。昨年度の結果では、PAG2 遺伝子の発現動態はウシ子宮内膜・胎盤組織 において、bta-miR-2328-3p及びmiR-2305とは対照的に妊娠に伴い発現が増加する傾向がみられ、有意な負の相関が認められることを明らかにした。すなわち、両miRNAがPAG2 mRNAに結合することによって、タンパク質の発現を調節している可能性がある。そこで、これらmiRNAの結合部位についてin silico解析で詳細に調べたところ、両miRNAはPAG2 mRNAの翻訳領域に結合する可能性が示された。現時点では栄養膜細胞株BT-Cへの遺伝子導入の改善を図ることができなかったため、HEK293T細胞にPAG2 cDNA全長の塩基配列を挿入した発現ベクターとmiR-2305 mimicあるいは Scramble miRNA を共に導入した。 miR-2305の細胞内含有量は、mimicを導入したもので有意に高値を示した。ウエスタンブロッティング法を用いて、PAG2タンパク質の発現量の測定を行ったところ, mimic導入時の発現量はその他のものと比較して、有意な差はみられなかった。同様にして、miR-2328-3p mimicを共に導入したところ、miR-2328-3pの発現量はmimicを導入したもので有意に高値を示した。しかし、PAG2タンパク質のmimic導入時の発現量は低下することはなく、むしろ高値を示した。一方、これら栄養膜特異的miRNAの発現分布を定量的リアルタイムPCRを用いて調べたところ、miR-2305及びmiR-2328-3pの発現量は各種組織の間で大きな差はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
さらなるin silico解析 によって、miR-2328-3p及びmiR-2305がPAG1に加えPAG2遺伝子の発現も制御している可能性が強く示唆された。しかし、合成miRNA mimicの導入実験では確証を得ることができなかった。また、栄養膜特異的miRNAとして抽出したmiR-2328-3p及びmiR-2305のウシ組織における発現分布を検証したところ、子宮及び胎盤においてのみ高発現しているわけではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞への合成miRNA mimic導入条件等の改良を引き続いて進めるとともに、miR-2328-3p及びmiR-2305以外の他の栄養膜特異的miRNAについても検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
追加実験及びこれまでの成果を論文投稿するため、 次年度使用が生じた。 追加実験の物品費及び論文投稿費用に充当する予定である。
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