研究課題
間葉系幹細胞(MSC)移植を基盤とした再生医療では、用いるMSCの品質を管理することが重要であり、ヒト再生医療領域においては、①培養シャーレへの接着性を有する、②骨、軟骨、脂肪への分化能を有するおよび③CD73、CD90、CD105を発現すること、が必須条件とされている。一方、ウマにおいてはこれら3種のCDがMSCの細胞表面マーカーとなるかどうかは明らかになっておらず、また市販抗体の多くはヒトやマウスに対するもので、ウマCDに対する反応性も明らかにされていない。そこで、ウマ及びイヌCD73/CD90/CD105に反応するモノクローナル抗体(MAb)を作製し、ウマおよびイヌMSCに対する反応性を検索した。CD73/CD90/CD105の細胞外領域をRT-PCRにより増幅した後、pETite N-His SUMO Kan Vectorにクローニングし、大腸菌BL21(DE3)にトランスフォームした後にIPTG存在下で融合タンパク質を誘導した。モノクローナル抗体(MAb)はHis SUMO-tagをSUMOプロテアーゼで切断・除去した組換えタンパク質を抗原としマウスに免疫することで樹立した。培養骨髄由来ウマMSCより細胞質可溶性画分と膜画分に分離し、各CDを認識するMAbを用いたウェスタンブロッティング(WB)に供した。さらに、レーザー顕微鏡により培養MSCの細胞表面における各CDの局在を確認した。その結果、各CDに対するMAbを用いた WBの結果、CD73およびCD90は脂質ラフト画分に加えて細胞質可溶性画分/非脂質ラフト画分にも検出されたが、CD105は脂質ラフト画分に特異的に検出された。また、3種類すべてのCDは培養MSCの細胞表面に検出されたことから、ヒトMSCと同様にこれら3種のCDはウマMSCの細胞表面マーカーとなり得ると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
ウマ及びイヌCD73/CD90/CD105に反応するモノクローナル抗体の作製に成功し、これらの抗体を用いるとウマ骨髄由来間葉系幹細胞の純度検定に用いることができることを提唱した。
ウマおよびイヌCD73/CD90/CD105に反応する複数のモノクローナル抗体を樹立しており、その中からエピトープを異にする抗体を選択する。各CDに対する2種類の抗体を用いて、各CDのタンパク質量を定量可能なサンドイッチELISA法により、間葉系幹細胞のより詳細な純度検定法を確立する。
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