研究課題/領域番号 |
18K05992
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松尾 栄子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (40620878)
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研究分担者 |
万谷 洋平 神戸大学, 農学研究科, 助教 (30724984)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二本鎖RNAウイルス / 遺伝子改良法 / リアソータントウイルス |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、切削ブロック面観察法や収束イオンビーム観察法とCLEMを合わせた三次元CLEM解析を行うため、先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)の支援に申請し、採択された。本支援では、レオウイルス科のウイルスである流行性出血病ウイルス(EHDV)が感染細胞に与える影響を電子顕微鏡レベルで解析するが、三次元CLEMで解析するサンプルには限りがあるため、観察の主な標的とする細胞内構造物やウイルス感染時間ならびに細胞固定条件などについて検討を行った。三次元化CLEMで用いる細胞固定条件および培養条件が、申請者らが用いていたものと異なっていたため、これらの条件が、感染細胞へ与える影響などについて詳細に検討を行った。新たな固定条件は、蛍光観察に不向きであることが分かったため、蛍光観察後、三次元化CLEM用の固定をし、サンプルを送付することにした。次に、昨年度作製したEHDV血清型2(EHDV-2)であるイバラキウイルスをbackboneとして、外殻タンパク質であるVP2とVP5をEHDV-6もしくはEHDV-7に置き換えたリアソータントEHDVを用いて、神戸大学附属農場の繁殖牛数頭の血液についてEHDVのスクリーニングを行なった。2015年のEHDV-6のアウトブレイク以降2019年8月までは、EHDV-6に対する抗体のみが検出された。9月に牛1頭から、EHDV-2およびEHDV-7に対する抗体が検出され、イバラキ病の発生が疑われたが、その後、EHDV-2に対する抗体価の上昇は、EHDV-7抗体による交差反応であることが分かった。また、11月にスクリーニングに用いていなかった繁殖牛が、「イバラキ病様疾病」を発症し死亡された。家畜衛生保健所との調査によって、農場内に不顕性感染牛が数頭おり、そのうち1頭はEHDV-6に対する抗体も保有していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
三次元CLEM解析を久留米大学医学部先端イメージングセンターの太田啓介先生にサンプルを送付するにあたっての条件検討を含む準備に時間がかかった。また、コロナウイルス流行によって、本年度末もしくは2020年度初頭に初める予定であった解析を中断することになった。また、神戸大学附属農場においてEHDV-7感染牛が死亡したことにより、当農場の疫学調査を優先したため、当初予定していたリアソータントウイルスを用いたEHDVの病原性因子の探索に遅れが生じた。しかし、本年度はやや時間がかかったものの、農研機構動物衛生研究部門(動衛研)の白藤浩明先生との共同研究のための手続きが完了し、日本国内のEHDV株を用いた研究を開始に向けての準備が整った。また、現在、EHDV-7死亡牛の血液からEHDV-7の分離を試みており、新たなEHDV-7株を用いた病原性因子の解析が可能である。よって、本年度は、研究の進行が遅れているものの、2020年度は挽回できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、引き続きリアソータントEHDVの作製と性状検査を行い、どの血清型のどのタンパク質がウイルスの病原性に影響を与えているかを明らかにする。また、EHDV-7死亡牛の血液からEHDV-7を分離し、白藤先生の協力のもと、全塩基配列を決定するとともに、性状解析を行う。特に、マウス肝細胞(NMuLi)におけるEHDV増殖性について詳細に解析を行う。また、2019年度末に分与された日本で分離されたEHDV-6(沖縄株)および、動衛研保存の他の血清型のEHDV株を用いて、リアソータントウイルスの作製と性状解析を遂行する。また、蛍光標識EHDVを用いて、EHDVと宿主因子の動態を可視化するとともに、三次元CLEM解析を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は予定していた使用額が少額(10円)余ったが、次年度の物品費に合算して使用する予定である。
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