研究課題/領域番号 |
18K05996
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
園田 紘子 宮崎大学, 農学部, 助教 (60608272)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リキッドバイオプシー / 細胞外小胞 / エクソソーム / 細胞浸潤 / 腎障害 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、「腎障害で浸潤してくる炎症細胞の種類および浸潤の程度を、尿を用いたリキッドバイオプシーで診断することが可能かどうか」である。平成30年度はアロジェニック腎移植ラットモデルを用いて検討を行った。 ドナーであるWistarラットの右腎をレシピエントである両腎を摘出したSDラットに移植し、5日後に採尿・腎摘出を行った。対照群には左腎摘出を行ったSDラットを用意した。尿からはリキッドバイオプシーの診断材料である細胞外小胞、エクソソームを段階遠心法で分離した。腎移植後5日の血液検査では対照群と比較して腎機能の低下が認められた。また、移植5日後の右腎重量は腎移植群で対照群のものよりも約3倍に増加していた。病理学的手法によって腎皮質における細胞浸潤領域を測定したところ、特に動脈周囲の尿細管間質において腎移植群で著しい細胞浸潤が認められた。このことから腎移植後5日後に急性拒絶反応が起きていることが確認された。浸潤細胞の種類を同定するために、免疫組織化学解析を行った。全ての腎移植群の腎において細胞傷害性T細胞のマーカーであるCD8が浸潤細胞に陽性を示した。一方、ヘルパーT細胞のマーカーであるCD4においてはほとんど陽性細胞が認められなかった。また、マクロファージマーカーであるIba1およびCD68については陽性細胞が認められた。次に、最も著明に浸潤細胞で陽性を示したCD8について、尿中エクソソームに存在するかどうかについてイムノブロット法を用いて検討した。その結果、対照群の尿中エクソソームサンプルには全くCD8のバンドはみられなかったが、腎移植群の尿中エクソソームサンプルではCD8がみとめられた。以上のことから、腎移植後の細胞傷害性T細胞の浸潤をリキッドバイオプシーで検出できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに平成30年度はアロジェニック腎移植モデルを用いた検討に着手できている。また、細胞傷害性T細胞についてはそのマーカータンパク質が尿中エクソソームに存在することを明らかにすることができ、リキッドバイオプシーによって腎における細胞浸潤を評価できる可能性を示すことができた。しかしながら、特異性の高い抗体が入手できず、まだ検討できていない免疫細胞の種類があるため、腎移植後に浸潤してくる免疫細胞について網羅的に検討できたとはいえない。したがって、おおむね順調に進展している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
アロジェニック腎移植モデルにおける経時的な検討は未着手であるため、腎移植後の拒絶反応の進行に伴う尿中エクソソーム中の浸潤細胞マーカー量の変化についても検討していく。また、アロジェニック腎移植以外の動物モデルについても着手していく。これまでの予備検討において、両腎虚血再灌流処置を行った急性腎障害ラットモデルを長期観察すると細胞浸潤がみられること、遺伝性多発性嚢胞腎マウスモデルにおいても嚢胞形成の進行に伴って細胞浸潤がみられることを確認している。したがって、これらのモデルについても浸潤細胞の同定と、浸潤細胞のマーカータンパク質が尿中エクソソームに存在するかどうかについて検討を行っていく予定である。
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