昨年度に続き、ヒトTmem86aに対する特異抗体を作製するための抗原として組換え発現大腸菌からTmem86aの129残基目からC末端までとマルトース結合タンパク質との融合タンパク質(129C)の精製を試みたが、160C融合タンパク質と同様に精製の過程で不溶化や限外濾過メンブレンへの吸着などにより充分な量を回収することができなかった。そこで、昨年度作製した4種のTmem86bとTmem86aのキメラタンパク質のうち、ほぼTmem86aの全長を含むCh4について組換え発現酵母からの分離・精製を試みた。しかし、培養条件について様々な検討を行ったが、スモールスケールでは充分な発現が認められたのに、ラージスケールで培養するとメタノールで誘導される約27kDaのバンドがほとんど検出されず、Ch4タンパク質を分離・精製することができなかった。Tmem86aはTmem86bと異なり、宿主の酵母に対して毒性を示す可能性が示唆され、酵母での大量発現は困難であることが分かった。また、Tmem86b ではTmem86aの保存性Cys(2カ所)がいずれもPhe(83および90残基目)に置換しているので、この部位に注目してCh4タンパク質の点変異体4種(F83C、F83A、F90C、F90A)を作製した。今後は引き続き、機能解析を行うために充分な量のCh4タンパク質の分離・精製を行い、プラスマローゲン代謝との関連について検討するとともに、他のキメラタンパク質(Ch1-3)や上記の点変異体についても解析し、Phe(83および90残基目)の置換による機能への影響について調べたい。
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