研究課題/領域番号 |
18K06001
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
内田 郁夫 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (70355204)
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研究分担者 |
玉村 雪乃 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 主任研究員 (90584384)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サルモネラ / ADP-リボシル化毒素 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
Salmonella enterica subsp. enterica. serotype Typhimurium(S.Typhimurium)の強毒型と考えられているファージ型DT104(ST DT104)は百日咳毒素様毒素(pertussis like toxin; Plt)の一つであるArtA/ArtB (ArtAB)を産生する。一方、S.Typhi (チフス菌)においてArtABとは異なるPlt として[PltA/PltB (PltAB)]の存在が報告されている。ArtABおよびPltABは種々の血清型菌が産生していることが知られており、サルモネラ属菌における新たな病原因子としての意義が注目される。本研究では、サルモネラ属菌におけるPltの生物学的機能および発現機構を明らかにし、それらの病原因子としての役割を解明することを目的とする。これまでの研究により、artAB遺伝子はマイトマイシンC、H2O2、キノロン系抗生物質等のSOS応答誘導物質の処理により誘導的に発現することおよびマクロファージ様細胞RAW264.7に貪食された ST DT104のartABは、細胞内において誘導的に発現することを明らかにした。さらに昨年度はRAW264.7細胞をArtABで処理することにより、細胞の殺菌能が阻害されることを示す結果を得た。本年度は細胞のArtAB処理がINF-γおよびLPSで活性化した細胞におけるH2O2などの活性酸素(ROS)の産生を抑制することを示す成績が得られ、ArtABはマクロファージにおける活性酸素の産生を抑制することにより殺菌能を抑制していることが示唆された。本年度はさらに、ST DT104のRAW264.7細胞内におけるartABの発現は細胞をホルボール12-ミリスチン酸13-酢酸塩(PMA)を用いて活性化すると増加するが、S. WorthingtonにおいてはPMA処理による有意な発現の増加は認められないことを明らかにした。PMAはマクロファージのROSの産生量を増加させることから、artABの細胞内における発現は細胞内のROSにより誘導され、その発現の程度は血清型により異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はArtAB毒素がマクロファージ細胞のROSの産生を抑制していることを示唆する成績を得た。一方、マクロファージ細胞内におけるST DT104のartAB遺伝子は細胞内のROSにより誘導的に発現することが示唆された。これらの結果はArtABの病原性因子としての機能の解明に向けた重要な知見となった。
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今後の研究の推進方策 |
ArtAB産生菌であるST DT104とS. Worthingtonにおけるマクロファージ細胞内における当該毒素の発現が異なることが明らかになった。この違いは、細胞内におけるROS等の刺激によるartABの発現の違いが反映しているものと想定される。そこで、両菌におけるartABのROSによるストレス応答の違いについて比較検討し、その機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行の影響により、実験が計画通り進めることができない部分があり、次年度使用額が生じた。
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