研究課題
Salmonella Typhimuriumの強毒型と考えられているファージ型DT104(ST DT104)は百日咳毒素様毒素の一つであるArtA/ArtB (ArtAB)を産生する。一方、S.Typhi (チフス菌)においてはArtABとは異なるタイプの百日咳毒素様毒素としてPltA/PltB (PltAB)が報告されている。ArtABおよびPltABは種々の血清型菌が産生していることが知られており、サルモネラ属菌における百日咳毒素様毒素は新たな病原因子として注目される。本研究では、サルモネラ属菌におけるArtABの生物学的機能および発現機構を明らかにし、それらの病原因子としての役割を解明することを目的とする。ArtAB遺伝子(artAB)は菌のプロファージ(Artファージ)にコードされている。これまでの研究により、artABはマイトマイシンC、H2O2、キノロン系抗生物質等のSOS応答誘発物質の処理によりArtファージの誘導に伴って発現すること、およびマクロファージ様細胞RAW264.7に貪食された ST DT104のartABは細胞内において発現することを明らかにした。さらに、ArtABは活性酸素種(ROS)の産生を抑制することによりRAW264.7細胞の殺菌能を阻害することを示唆する成績が得られた。また、artABの細胞内における発現はROSにより誘導され、その発現の程度は血清型により異なることを明らかにした。本年度は、菌の酸化ストレス応答に関与するoxyRの発現応答の強い菌ではArtファージのcIリプレッサーの発現が増加し、これによりArtファージの誘導が抑制され、artABの転写が抑制されるためにその細胞内発現が弱くなることを示唆する成績が得られた。すなわち、細菌の酸化ストレス応答の強弱が細胞内における毒素産生能に反映している可能性が示唆された。
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Microbiology
巻: 168 ページ: 1-12
10.1099/mic.0.001152