研究実績の概要 |
ユビナガコウモリ,キタクビワコウモリ,キクガシラコウモリとモモジロコウモリから分離したBartonellaのgltA,rpoB領域による相同性解析を行ったところ,各コウモリから分離された株は,いずれの既存種にも該当しなかった。 gltA領域の系統解析では,コウモリ由来13株は7系統(A~G)に分類された。系統A, B, D, Gは,それぞれMiniopterus属,Myotis属(2系統),Vespertilionidae科のコウモリにそれぞれ固有の新種であることが明らかとなった。また,系統Cの株は複数のコウモリ科から分離されていることから,コウモリの科を超えて感染可能な系統であると考えられた。さらに,日本のユビナガコウモリとキタクビワコウモリから分離された系統EとFの株は,それぞれ単系統を形成したことから,両コウモリ種に固有のBartonellaであることが示唆された。 全ゲノム解析により,7系統の株は宿主の血管内皮細胞への接着に関与する分子をコードするbadA, omp43, omp89の全てまたはいずれかを保有していることが明らかとなった。また,全株は血管内皮細胞内への侵入に関与する分子をコードするvirB/virD4/beps,宿主血管内皮細胞への接着および侵入に関与する分子をコードするtrw, ialB,赤血球中での持続感染を成立させる分子をコードする hbps遺伝子を保有していたことから,B. henselaeと同様の機序で宿主の血管内皮細胞や赤血球へ感染すると考えられた。一方,全てのキタクビワコウモリ・キクガシラコウモリ由来株,モモジロコウモリ由来の1株は,マクロファージの貪食を阻害する分子をコードするvapA遺伝子を保有していることが判明した。したがって,これらの株はvapAの機能を用いて宿主のマクロファージによる貪食を阻害することにより,生体内で長期間生存する可能性が考えられた。
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