研究実績の概要 |
本研究は、犬の脂肪由来間葉系幹細胞(AT-MSC)から分泌されるエクソソーム(Exo)が免疫調節機能に与える効果を検討した内容である。初めに、本検討で使用するExoの解析を実施した。ナイーブな状態のAT-MSCとTNFα+IFNγによって刺激したAT-MSCの培養上清液からPSアフィニティー法を用いてExoを回収し、ナノサイト解析によって粒子経ならびに粒子数を解析した。その結果、犬のAT-MSC培養上清液から回収された粒子は平均150nm程度にピークが確認された。また、回収したExoのタンパク解析の結果、エクソソームマーカーであるCD9およびCD63が確認されたことから、犬のAT-MSC培養上清液からPSアフィニティー法によって、Exoは単離できることが実証された。 次に、ナイーブな状態とTNFα+IFNγによって刺激した状態、それぞれのAT-MSCが分泌するExo中のmiRNAをマイクロアレイによって解析した。その結果、TNFα+IFNγによって刺激したAT-MSCが分泌するExoでは、抗炎症や免疫調節に関連するmiRNAの含有量に変化がみられた。 さらに、末梢血単核球(PBMC)に含まれるT細胞に与えるExoの効果を解析した。CFSEによる細胞増殖解析の結果、Exo添加によってPBMCの増殖には抑制がみられ、CD4+T細胞ではより顕著であった。また、Exo存在下ではアポトーシスが誘導される結果であった。リンパ球分画においては、Exo添加によってCD4+T細胞およびCD8+T細胞の割合は減少がみられ、CD8+T細胞に顕著な変化であった。さらに、Exo添加によるTh1, Th2, Th17の変化について検討した結果、Th1およびTh17には減少がみられたのに対して、Th2では増加が認められた。また、制御性T細胞においても、Exo添加によって増加が認められた。
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