研究課題/領域番号 |
18K06006
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
佐原 弘益 麻布大学, 獣医学部, 教授 (10260762)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イヌ乳癌細胞 / 酸化ストレス耐性 |
研究実績の概要 |
ヒト癌幹細胞においてCD44分子のバリアントアイソフォーム(CD44v)が、シスチントランスポーター(xCT)の機能を亢進することが明らかとなった。すなわちCD44vは内在性の抗酸化物質GSH生合成の要であるシスチンの取り込みを亢進し、細胞内の酸化ストレス耐性能力の亢進させ、抗がん剤や放射線耐性能力を高めていることが明らかとなった。我々もイヌ、乳癌細胞株においてもCD44vが発現していることを見出し、酸化ストレス耐性能力を亢進させることを見出した。 本研究における平成30年度の課題は:「イヌ乳癌細胞で発現していたCD44v8-10の発現とGSH生合成の亢進におけるxCTとの分子相互作用を検討する。」であった。 はじめに、CD44vが発現しているイヌ乳がん細胞株を用いて、xCTが発現しているかどうかをウエスタンブロティング(W.B.)で解析した。その結果、xCTは検出できなかった。その原因を知るため、xCT遺伝子発現をReal Time RT-PCR法で調べた。その結果、その発現量はCD44vに比較して極めて低いことが判明し、W.B.で検出できないことが理解された。それに加えて、膜タンパク質の可溶化による抽出が難しい(非効率)ということも起因している。しかしながら乳がん細胞株でxCTが発現していることが確認できたので、実際にxCTが機能しているのかを確かめため、xCTの阻害剤,スルファサラジン(SSZ)を添加してGSHの生産量ならびに酸化ストレス耐性の減弱を調べた。その結果、SSZ処理によって抗酸化ストレス耐性が減弱したことから、乳がん細胞におけるxCTは酸化ストレス耐性に機能していることが明らかとなった。今回直接CD44vとxCTとの分子会合を見るとこはできなかったが、xCTの関与が示唆できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画と異なっているが、解析は進んでいる。xCT分子そのもののW.Bによる検出ができなかった。これは想定された問題点、膜タンパク質の可溶化が原因であったことと、そもそも発現量が非常に少ないことが示唆された。しかし、直接の分子会合はみられなかったものの、xCTの阻害剤SSZを用いての酸化ストレス耐性の減弱化が見られたことから、xCTの明らかな関与を証明することができたので、方法は違うものの機能解析は進展した。
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今後の研究の推進方策 |
CD44vの酸化ストレス耐性機能におけるxCTと共働関係については、xCTの遺伝子発現での確認や阻害剤を用いての実験で、間接的にはそれらの関係を証明できたと考えている。したがって、計画にあげた免疫沈降法によるCD44vとxCTの分子会合の解析は、一時中断し、計画を変更したい。しかしながらxCTの関与については、臨床的な観点から手術材料由来の癌組織内のCD44vとxCTの共発現の解析をしたいと考えている。 令和元年度(平成31年度)については、イヌCD44vを特異的に認識するモノクローナル抗体作成であるので、これに邁進していきたい。現在、昨年度からモノクローナル抗体作成にあたりその抗原となる組換えCD44vとヒトIgG FC部分との融合タンパク質の生成の取り組んでおり、融合タンパク質の生成に成功している。今後はマウスへの免疫をしてはハイブリドーマの作成を行っていきたい。
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