研究課題/領域番号 |
18K06008
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
岡本 まり子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (30415111)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗腫瘍免疫 / イヌ肥満細胞腫 / 自然免疫活性化 / 膜型エストロゲン受容体 / GPER / 細胞死誘導 / 遺伝子導入用高分子 |
研究実績の概要 |
抗腫瘍獲得免疫の効率よい誘導の規定因子はいくつか挙げられるが、腫瘍に対する自然免疫の効果も考慮すべき点である。瘍に対する自然免疫系を効率よく活性化させるためには、① 腫瘍細胞に細胞死を誘導し抗原量が過多にならないようにする、② 死んだ腫瘍細胞や生き残った腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞内で安定的に腫瘍由来DNAが存在し自然免疫の活性化が効率よく行われる、という2点がポイントとなる。本研究ではイヌ腫瘍細胞を対象とし、GPER分子の標的薬と遺伝子導入用高分子材料を用いて、前述の2点が効率良く誘導され自然免疫活性化が亢進されるかについて検討する。今年度はまず、標的細胞上のGPER発現検討およびGPER標的薬による細胞死の誘導の検討を行った。対象とする腫瘍細胞はイヌ肥満細胞腫細胞とした。まずイヌ肥満細胞にGPERが発現しているかどうかを検討した。その結果、GPERの発現はイヌの他の腫瘍細胞や正常細胞に比べ高いことが明らかとなった。この結果を受けて、イヌ肥満細胞腫細胞にGPERアゴニストを作用させて細胞増殖を検討した。その結果、GPERアゴニストを投与したイヌ肥満細胞腫では細胞増殖が抑制されることを見出した。トリパンブルー染色法による細胞死検出では、GPERアゴニストを投与したイヌ肥満細胞腫において死細胞が増加していることもわかった。次に、遺伝子導入用高分子材料を用いた抗原取り込みについて検討した。マウス樹状細胞株DC2.4に、抗原としてFITC-OVAを、アルギニンを付加した高分子遺伝子導入材料を添加して取り込み能を調べた。その結果、この高分子遺伝子導入材料の存在化で樹状細胞は効率よくFITC-OVAを取り込むことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30~31年前半を目安にGPER標的薬による細胞死の誘導の検討の遂行を当初計画していた。 すなわち、1.イヌ腫瘍細胞上のGPER発現の確認、2. GPER標的薬によるイヌ腫瘍細胞の細胞死誘導検討、3. GPER標的薬によるイヌ腫瘍細胞上の免疫回避分子(PD-1, LAG3等)の発現影響を解析し、細胞死誘導・自然免疫活性化の手がかりを検討、を計画していた。そして平成30年度は1.については完了し、2.についてもGPERアゴニストによりイヌ肥満細胞腫細胞が細胞死を起こすことを明らかにすることができた。3.については現在イヌ免疫回避分子に結合可能な抗体を検討中である。さらに、平成31年以降に遂行予定だった実験(DC2.4に腫瘍細胞を貪食させ、腫瘍由来のDNAを効率よく検出できる実験条件の確立)にも着手しており、条件確立の一途となる結果も得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30~31年前半を目安にGPER標的薬による細胞死の誘導の検討の遂行を当初計画していた。 すなわち、1.イヌ腫瘍細胞上のGPER発現の確認、2. GPER標的薬によるイヌ腫瘍細胞の細胞死誘導検討、3. GPER標的薬によるイヌ腫瘍細胞上の免疫回避分子(PD-1, LAG3等)の発現影響を解析し、細胞死誘導・自然免疫活性化の手がかりを検討、を計画している。1.、2.については前述した。3.については現在イヌ免疫回避分子に結合可能な抗体を検討中である。 次に、平成31~32年前半を目安に高分子材料による樹状細胞内での腫瘍由来DNAの安定性促進検討を計画してる。すなわち、1.DC2.4に腫瘍細胞を貪食させ、腫瘍由来のDNAを効率よく検出できる実験条件の確立、2. DC2.4のみと比べ、作用後腫瘍由来DNAの細胞内存在量が高くなる高分子材料の探索・検討、3. 1.および2.で同定した高分子材料を使用した腫瘍細胞貪食後の樹状細胞活性化の検討、を計画している。すでに平成30年度で、アルギニンを付加した高分子遺伝子導入材料がタンパク抗原を効率よくDC2.4細胞に取り込ませることを明らかにした。そのためこの結果を元に腫瘍細胞の取り込みについて今後検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入試薬が発注した時期にメーカーがセール(キャンペーン)を行っており、当初の想定より安い価格で購入することができたため、次年度使用額が生じた。これについては、平成31年度に消耗品費に充てる予定である。
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