研究実績の概要 |
本研究では、マウスの巣作り行動の神経基盤を明らかにするために、①マウスの巣作り行動の過程を赤外線深度センサを用いた行動解析システムで非侵襲的かつ3次元的に解析する、②巣作り行動に関与する神経細胞を神経活動マーカーであるc-Fosタンパク質の発現を指標にして同定し、巣作り行動に関わる脳領域を特定する、③巣作り行動を制御する神経回路を薬理学および光遺伝学の手法を用いて明らかにする、という3つのテーマを掲げている。2020年度は主に②と③を進め、①については論文発表した(Otabi et al., Anim Sci J., 2020)。②については、マウスの脳の各部位を抗c-Fos抗体で発現解析(免疫染色およびウエスタンブロッティング)し、巣作り行動で特異的に活性化する脳領域の同定を行った。特に心理社会的ストレスと巣作り行動のどちらにも関与すると想定される視床下部の室傍核(PVN)の解析を行い、アルギニン・バソプレシン(AVP)ニューロンとc-Fosの共局在を評価し、巣作り行動を制御する脳領域の特定を試みた。まず、急性社会的敗北ストレス(ASDS)モデルマウスのPVNニューロンのc-Fos発現を免疫組織化学的手法で観察したが、明確な発現量の上昇は確認されなかった。そのため、ASDS後の視床下部および血漿のAVP濃度をELISAによって確認したところ、ASDSの1時間後および6時間後にはAVP濃度に変化はなかった。③についてもAVP神経に着目し、バソプレシンV-1b受容体阻害剤であるSSR149415を脳室内投与し、ASDSモデルマウスの巣作り行動を観察したが、巣作り行動の遅延に影響はなかった。
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