次世代を生産する生殖現象では、その担い手である雌動物の生殖細胞である卵子が生体内で生産される機構を解明することは動物生産あるいはヒト生殖医療において現在、重要な課題となっている。本研究では、哺乳類の卵巣内における卵母細胞と卵母細胞の発育をサポートする卵胞の発育機構および選抜過程のメカニズムを解明し、どのような資質をもつ卵母細胞・卵胞が発育を開始するのか明らかにすることを目的とする。これまでに卵胞形成時および初期の卵胞発育期において卵胞基底膜の構成成分である細胞外マトリックスがどのように分解・再合成が行われるかについて研究を進めてきた。前年度の研究で、卵巣を体外培養する過程において細胞外マトリックス分解酵素を培養培地に導入し、卵胞形成にどのような影響を与えるか解析を行ったところ、培養後に卵胞形成不全が観察され細胞外マトリックスの再合成が正常に起こっていないことが明らかとなった。このことから、令和元年度は細胞外マトリックスの分解・再合成過程を体外で再現するシステムの構築を目指し、新生仔マウス卵巣・卵胞の体外培養システムの改良を行い、一部研究成果について国際学会で発表を行った。また、これまでに新生仔卵巣の体外培養にはウシ胎仔血清(FBS)が不可欠であったが、FBSは動物由来の成分であり微量の未知成分を含むことから、細胞外マトリックス分解酵素が阻害される可能性があると考え、FBS無添加の体外卵巣培養培地を検討した。その結果、FBS無添加培地で新生仔卵巣を数日間体外培養可能であることが明らかとなった。
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