本研究では、哺乳類の卵巣内における卵母細胞と卵母細胞の発育をサポートする卵胞の発育機構および選抜過程のメカニズムを解明し、どのような資質をもつ卵母細胞・卵胞が発育を開始するのか明らかにすることを目的とする。これまでに卵胞形成時および初期の卵胞発育期において卵胞基底膜の構成成分である細胞外マトリックスがどのように分解・再合成が行われるかについて実験モデル動物であるマウスを用いて研究を進めてきた。令和2年度は、令和元年度に改良した新生子マウス卵巣の体外培養系の改良を引き続き行い、卵巣のライブセルイメージングに適した体外培養系の開発をさらに試みた。これまでに開発された体外培養法では、培養基材となる培養膜およびプラスティックディッシュが共焦点レーザー顕微鏡下で蛍光像を取得する際に干渉することが課題であったことから、本研究では蛍光観察に干渉しにくい培養基材であるガラスボトムディッシュによる卵巣の体外培養法を検討した。しかしながら、ガラスボトムディッシュは細胞が接着しにくいため、接着培養が不可欠な卵巣組織などのライブセルイメージングには不向きであった。そこで、我々はガラスボトムディッシュ上で卵巣組織の形態を維持しがなら培養する目的で、細胞接着用試薬、適切な培地量および基礎培地の検討を行なった。その結果、ガラスボトムディッシュ上においても卵巣内で卵胞発育が可能であることが示された。また、細胞外マトリックス合成関連遺伝子群の中から卵胞形成過程に関連する遺伝子を探索する目的で、マウス胎子期および出生後卵巣で細胞外マトリックス合成関連遺伝子の発現を定量PCR法により解析した。その結果、卵胞発育能と相関する細胞外マトリックス合成関連遺伝子が明らかになった。
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