研究課題/領域番号 |
18K06019
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山中 仁木 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (30533921)
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研究分担者 |
増山 律子 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (60297596)
大沢 一貴 長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 教授 (90244756)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヘリコバクター属菌 / 盲大腸粘膜 / 腸内細菌叢 / 粘膜バリア / ゲノム解析 / マウス |
研究実績の概要 |
我々が分離培養したHelicobacter japonicus Mu-ngs1株は、免疫不全であるSCIDマウスでは盲大腸粘膜において強い炎症を誘導し病原性が疑われた。更に、免疫正常のBALB/cマウスでは、感染初期では各種サイトカイン発現は亢進し軽度の炎症像が見られた。しかし、その後特異抗体産生は有意に亢進するにも関わらず盲大腸における菌は持続的に感染し、腸粘膜では軽度の炎症像は認められるもののサイトカイン発現亢進は収束していた。また、Mu-ngs1感染により宿主粘膜における粘液成分MUC2や有鞭毛細菌に効果を示す抗菌ペプチド(LYPD8)発現が抑制され自ら生息し易い環境を作出する一方、defensin14やReg3γ発現が促進されていた。そこで、Mu-ngs1株感染が腸内細菌叢の変調(dysbiosis)を誘導する可能性が考えられ腸内細菌叢の解析を行った結果、非感染マウスと比較してラクトバシラス属、バクテロイデス属が増加し、クロストリジウム属XIVaおよびIVサブクラスターに属する菌が減少していることが明らかとなった。糞中の有機酸含有量では感染群でコハク酸が多く、Mu-ngs1の感染によりdysbiosisが起ることによりコハク酸が蓄積し炎症を誘導する可能性が考えられた。 共同研究によりMu-ngs1分離株の全ゲノムを明らかにすることができた。現在、ゲノムにコードされた情報について解析を始めている。 更に、同属菌で病原性などの性状について非常に情報が少ないH.mastomyrinusについて分離することに成功した。この分離菌は、H. japonicus Mu-ngs1株と比較してSCIDマウスにおいて盲大腸に非常に強い炎症を誘導することが分かった。現在、BALB/cマウスにおいて病原性について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年12月における現職への異動に伴う研究遂行の遅れが現在も影響している。また、Mu-ngs1株のマウス感染成立が容易ではないこともやや遅れている影響の一つである。病原因子の解析について、全ゲノム配列解析情報を基に研究を進めることが効率が良いと考え、現在その解析を始めているところである。また、病原因子解析のためのオルガノイド作成については材料等は準備は整え実施できるところにある。更に、H. japonicus Mu-ngs1株に加え、H. mastomyrinus分離株についても解析をはじめ、Mu-ngs1株と比較対象となる可能性を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は解析が終わった全ゲノム配列情報を基に、コード情報の解析を進めていく。この解析情報を基に、病原因子等株間での比較により病原性の相違について検討する予定である。 この病原性因子のin vitro評価系になり得るオルガノイド作成法について当研究室における確立を遂行する予定である。 更に、H. japonicus Mu-ngs1株に加え、H. mastomyrinus分離株のSCIDおよびBALB/cマウスにおける病原性解析を進め、Mu-ngs1株との比較解析も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年12月の現職への異動に伴う実験の遅れ、およびH. japonicus Mu-ngs1株のマウス感染が容易でなく手間取るなどの研究の遅れから、予算執行に影響している。 次年度において、令和2年度請求額と合わせて消耗品費等として使用し、研究を進めていく予定である。
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